突然だが、俺は腐男子だ。腐男子とは同性の絡みや愛を嗜好としている男子のことだ。腐男子が主人公な場合、小説内では一見傍観しているだけのようであるけど、不思議なことに最近は腐男子受けとか流行っているらしい。俺から言わせて貰うと、王道学園に入学してホイホイ転入生に近づくのはただの馬鹿の愚考だ。単細胞だ。ミジンコだ。…ミジンコは言い過ぎか。
 俺は別に生で見たいとは思わない。小説とか漫画とかで満足できる。いや、そりゃあ見たいっちゃあ見たいけどな。でも自分を犠牲にしてまでとは微塵も思わない。だから俺は普通の学校に行くんだ! そしてできれば彼女作ってリア充したい!
 中学のときは親友とナンパ三昧だったけど、俺は新しい晃になるんだ。ちゃんと恋愛して、真面目に授業受けるんだ。中学の時は親友が不良なせいで微妙に恐れられてたから友達もあまりいなかった。だから友達も贅沢は言わないから四人は欲しい。
 親友はそこらへんの不良なんて片手でポイッとするレベルで強い。だから妬まれたり恨んだりするやつも勿論いて、一緒にいる俺も必然的に狙われるようになった。そして喧嘩強くなってしまったっていうね。それ俺に要らない設定だよな? でもなかったらフルボッコだから、まあ…いいか。あいつとはクラスが別になったから今までよりはマシだろう。
 目立つほど顔は整ってないけど、変に目立たないようにとひっそりと入学式を終えて現在。テンションは全く上がらなかった。会長とか出てこなかったんだけど。何でだ? 挨拶ないとかどんだけだよ。超がっかりだよふざけんな。だから俺は途中から寝てしまった。


「あきら」
「あ、夏木」

 式が終わって教室に向かっている途中、例のナンパ仲間兼親友の夏木が話しかけてきた。因みにこいつは見た目不良、そしてイケメンボイスの持ち主だ。そして電波だ。顔は悪くないレベルだが、俺と同じ平凡。しかし女子はただの平凡とイケメンボイスの平凡(+危ない男)だと後者を選ぶんだよな。彼女できても夏木みたいに長く続かないし。……悪かったな普通の声と普通の見た目で。でもよく考えてくれ。こいつはお馬鹿なんだ! 未だに「む」が書けないアホの子なんだ! メールが絵文字と顔文字と平仮名だけ(要約すると暗号)で滅茶苦茶読みにくいんだ!

「HRとかたるい。あきら、さぼるぞ」
「いやお前は不良だからいいけども! 俺は静かに過ごす優等生でありた――」
「いくぞ」
「話聞いてるかなあ、なつきくーん!?」

 掴まれた腕を振り払えば、ムッと顰められた顔。

「なんだよ。でるのかよ」
「そうそう。中学と違って優等生を目指すからな!」

 見ろよこれ、とオシャレ黒縁眼鏡を取り出して見せびらかす。

「俺のマイエンジェル、かなこちゃんだ!」
「ふーん」

 超棒読みな返事を返されてしまった。お前いつも思うけど愛想悪すぎだろ。もう慣れたけど。
 夏木のことを頭から消し、マイエンジェルを優しく愛でると何を思ったか、夏木はそれを神速で奪い取り、窓に放り投げた。因みにここは三階だ。「マイエンジェルゥゥゥゥゥー!」

 は、儚い命だったマイエンジェルかなこちゃん…。

「じゃま」
「邪魔ってどういうことおおおかなこちゃん返せよてめえええ!」
「かなこってだれだよゴリラか?」
「何でゴリラ!?」

 いやゴリラも霊長類だけどね!? 何で今流れでゴリラに…。そうなると俺のマイエンジェルゴリラになっちゃうから! やめて!

「あ、ちょう」
「え、蝶? …え、ちょ、お前どこいくの? 俺のマイエンジェルは? おい待てクソ電波あああああああ」

 脳内で蝶が見えたらしい夏木は颯爽と消えていき、残された俺。




以下、微ネタバレ有り人物紹介


◎蔦森 晃(つたもり あきら)

平凡腐男子。身長は高くてモデル体型寄り。ファッションには気を使うが彼女はあまりできない。
馬鹿だと自覚していない馬鹿。優等生(笑)


◎新山 夏木(にいやま なつき)

平凡不良。電波でお馬鹿さん。
頭は悪くないが、平仮名の「む」が書けない。晃を大変信頼している。晃のことは親友的な意味で大好き?
女の子は好きだが、女の子<晃。晃に彼女ができて構って貰えないと拗ねる。
ファッションセンスはない。晃に任せている。