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(No side)



 ある日の生徒会室のことであった。副会長である雨谷紫炎がニヤニヤと自身の携帯電話を操作していた。彼がどうしてそのような表情をしているか瞬時に理解した書記の空音明は呆れた顔を向ける。その中、偉そうに椅子に座っている生徒会長の久賀直人だけが訝しげな表情をしていた。

「何見てんだよ、気色わりぃな」
「気色悪いとは失礼ですね」

 そう言いながらも、顔は緩みっぱなしであった。ますます怪訝な顔をした直人は明に目を向けた。

「お前、何見てんのか知ってるのか」
「あー、まあ」

 教えろと言わんばかりの直人の視線に、明は不自然に目を逸らす。先日淳也に直人と付き合うことになったと知らされた明は、正直に言っていいものかと悩んだ。何故なら、紫炎の気味の悪い笑みには、淳也が関係しているからである。

「えーと…」
「中村くんって可愛いなあ…」

 こいつ馬鹿かよ。明は頭を押さえて溜息を吐いた。

「あ?」

 呟きを拾った直人がドスの利いた声で聞き返す。明はひくりと口を引き攣らせた。

「おい雨谷。テメェ、今何つった?」
「え?」

 漸く我に返った紫炎は目を丸くして顔を上げる。不機嫌顔の直人と目が合い、内心慌てる。救いを求めるように明を見るが、既にこっちを見ていなかった。

「え、えっと…?」

 引き攣った笑みを浮かべて小さく首を傾げれば、直人は口を歪めた。

「中村が、なんだって?」