振りほどこうとしているうちに、芳名がいなくなっていた。舌打ちして諦めると、クソ会長がしたり顔で俺を見た。うぜえ。

「つーことで、だ」
「あ?」
「話しながら戻るぞ」

 話しながらっていうのは。……あのことだよな。俺は小さく、ああと答えて頷く。そこで漸く腕を掴んでいた手が放された。
 校舎の方へと足を向ける。クソ会長が歩き出したのを確認して、俺も足を動かす。

「お前が気にしていたのは、戸叶のことだけか?」

 俺は黙る。何か言わないと。早く肯定しないと認めてしまう。でも俺は何も言うことができなかった。
 クソ会長は呆れたように溜息を吐いた。

「……俺の恋人が誰だって、気にする奴いねえよ」
「…いるだろ、そこら中に」

 何を言ってるんだこいつは。自分の影響力を分かっているんだろうか。

「……本当に、俺でいいのか」
「お前がいいんだよ」

 「そ、そう…か」即答され、俺はたじたじになりながら答える。へえ、という声が耳に入る。見なくてもニヤニヤしているのが分かった。

「で、お前こそ俺で良かったのか?」

 俺はちらりとクソ会長を見る。案の定ニヤニヤしていて、その余裕たっぷりな顔に腹が立った。俺はぐいっとクソ会長のネクタイを引っ張ると、勢いよく顔を近づけた。がちん、と歯が当たって音が鳴った。地味に痛い。
 ぱっと手を放す。痛かったが、クソ会長は呆然としていて、気が晴れた。

「……下手すぎだろ」

 うるせえ、と言おうとして口を開いたが、すぐに閉じる。少し顔が赤かったからだ。今度は俺が呆然とする番で、その顔を見ていると、じわじわと俺の顔にも熱が集まってきた。
 それから数分。俺たちは青い空の下で、顔を赤くしていた。











fin.

完結!とは言っても、まだ続きます。
会長の過去、付き合ってからの彼ら、本編で明かされなかったことをちょこちょこ書いていくつもりです。

ひとまず完結ということで、これまで読んでくださった方、応援してくださった方、ありがとうございます。
楽しんでいただけたでしょうか?戸叶の方が好きだった!という方、すみません><
結構わがままなキャラにしたので、嫌われてるかもな〜と思ったら、意外に好きだという方もいらっしゃって、驚きとともに嬉しく感じました。

ということで、これからは番外編のようなものを書いていきます。
このページからではなく、ネタ帳のタイトルの下にリンクを貼りますのでそちらからどうぞ。
それでは、もう少しだけおつきあいくださいませ!

15/04/14