「はあ? ふざけんじゃねぇ! 俺様は魔王だぞ!」
「生憎この世界に魔王はいないんでね、お前は今俺と同じ庶民だ」
「くっ…! 俺様のこの魔法で恐怖を味わわせてやる…!」

 どうやら魔法が使えるらしい。魔王だけなのか他の奴も使える世界なのかはよく分からないが、魔王なんだ。嘸かし恐ろしく強い魔法なんだろう。……え、俺ヤバくね?
 魔王が何語か分からない言葉を発しながら大きく振りかぶる。そして周りに黒い靄が出てきて俺と魔王を包む。風も軽く吹いてきて、ファンタジー漫画でよく見る魔法陣のような円盤が床に刻まれた。それが一層非現実な状況を強調する。あ、俺終わったわ。死ぬ。

「精々あの世で後悔しやがれ、玲於!」

 衝撃に備えて目を力一杯瞑る。
 ぷすん。

「……ん?」

 痛くないぞ。目をそろそろと開けると、日々見ている何も変わらない――唯一変わってるところは壊れたゲームと目の前にいる魔王――部屋だった。あれ? 俺死んでいない。ていうか何も起こってないのか?
 魔王を見ると瞠目して、絶望の表情をしていた。

「なっ…使えないだと!?」

 どうやら不発に終わったらしい。命拾いしたな、俺…。

「へぇ、圏外なのか。ここは」

 そんな携帯が圏外みたいな軽いノリで言っていいのか…? って、あれ?
 少し声が高い声が聞こえて、俺は首を捻る。魔王ってもうちょっと低かったような…。

「クソッ!」

「まったく、クソ魔王は騒がしいな」
「……どわああああああ!?」

 いつの間にか知らない男が俺のベッドに我が物顔で足を組んで座っていた。こいついつからいたんだよ!? ってか誰!?

「何だよ玲於、うるせえな…って、……ああああ! アストラム!」

 俺は素早くパッケージを見る。確かに同じ顔だ。マジかよ…。


以下人物紹介+ゲーム設定

◎上坂 玲於(コウサカ レオ)
主人公。元不良。今は更正してる(?)


「光陰の剣」
ファンタジー系女性向け恋愛ADV。
攻略キャラは6人、モブキャラが数人。サブルート、隠しキャラ有り。
殺傷関係でレーティングはCERO C(15歳以上対象)
声優はあまり有名な人物を使わなかったので人気は出なかった。しかし、イラストや内容、システム面、意外に声優がよかったということから一部では熱狂的ファンが存在する。

11/07/20