昼。俺たちはラーメンを食っていた。

「お前、今なにしてんの」
「飯食ってるけど」

 幹太は、ずる、と麺を啜り、俺を見る。咀嚼と飲み込む音の後に返ってきた答えに、俺はそうじゃなくて、と首を振る。俺の訊き方が悪かった。

「学校だよ。どこ行ってんだっけ」
「朝生田。テメェが行く予定だったとこだよ」

 恨ましそうに俺を睨む幹太に苦笑を返す。進路をここに決める前、一緒に朝生田に行こうと言っていたのに、変更したことをまだ根に持っているらしい。ここに入るため、勉強はしていたみたいだが、学力が足りなかったのだ。

「朝生田か…どんな感じだ?」
「どんな感じって……ばかみてーに騒いでるだけだ」

 幹太は苦笑して、お前はどうなんだと訊ねてきた。

「なんか、元気ないように見えるけど」

 ぎくりとした。気付いていたのか。好きな奴に突き放されて傷ついたなんて言ったら、間違いなく好きな奴は誰だと訊かれるだろう。俺は曖昧に笑みを浮かべて、ちょっとなと返した。

「あいつは?」
「日向? まあ、特に問題はねえよ。最近は倒れてないからな」

 俺は顔色の良い日向の太陽のような笑みを思い出し、笑った。
 それにしても、日向が今付き合っているんだと言ったら、どんな反応をするだろうか。そんなことを思いながら麺を啜る。ふうんと相槌を打った幹太は、頬杖を付く。レンゲを脂の乗ったスープに浸しながら、俺を見る。

「その様子だと、あいつ関係じゃねーみたいだな」
「え? あ、まあ…」
「そうか。いつでも相談に乗るからな」

 日向関係じゃないと分かると途端に嬉しそうになる幹太。不思議に思いながら、礼を言った。