「どーすんだ、これ」

 テレビを睨みながら頭をガシガシと掻く。やっぱやるんじゃなかった。ゲームの電源を落とそうと手を伸ばし――たらそれはテレビからにゅっと出てきた手に掴まれる。……え? テレビから出てきた手? 俺は目を見開いて青ざめる。いやいやいや、テレビから手が出る訳ない。これはきっと夢だ。夢に違いない。しかし、それとは裏腹にしっかりと体温があり、痛いくらいきつく握られる手に恐ろしくも現実味を感じさせられた。腕を振って見るが放すまいとより強くなった握力に俺は小さく悲鳴を上げる。振って駄目なら後ろに下がるか。立ち上がって思い切り力を込めて後ろに下がった。ズボッと音がして、急に引力がなくなり、勢い余って転んだ。顔面を強打し、痛さに顔を歪めると今度は何かによって床に叩きつけられる。

「ぁぐあっ!?」

頭は男の片手で床に、両手を背中で押さえられて完全に身動きが取れない。足をバタバタと動かしても力が加わるだけ。どうしろっていうんだよ…!
 これでも若い頃は喧嘩が日常茶飯事だったのに、と舌打ちする。その舌打ち聞こえたのか、力が一層加わった。

「っぅぐ!」
「テメェ、なにもんだ」

 いやお前が何者!? 頭を押さえる手がギリギリと強くなる。イダダダダダダダ! 凄い握力強いんですけど! 頭潰れそうなんですけど! 取り敢えずこの不審者に名乗った方が良さそうだ。

「おっ、俺は上坂玲於だっ…」
「コウサカレオ? 変な名前だな。つーかテメェ、ここはどこだ」

 何で俺は見知らぬ男(しかも不法侵入)に頭床に叩き付けられて腕も押さえられてて、何者とか言われて名乗ったら名乗ったで変な名前とか言われなきゃなんねーんだよ! ふざけんな! つか俺の名前の発音明らかに可笑しいから!