「じゃあ、的場のこと、宜しく頼むな」
「……はあ」

 曖昧な返事で頷くと、担任は苦笑して部屋を出て行った。担任には悪いが、俺は的場の面倒は見ない。好き勝手してくれ、と思っている。
 俺は元々ぐしゃぐしゃだった髪を更に掻き混ぜて溜息を吐く。視線を感じて的場の方を向くと、俺は顔を顰めた。

「…なに」
「いいえ」

 そう言ってふいっと顔を逸らす的場。表情は読めないが、何かを言いたそうな顔をしていたような…。ま、気のせいか。




 真っ黒なディスプレイに強ばった自分の顔が映る。俺は起動ボタンに指を乗せて、ごくりと喉を鳴らす。新着メッセージは…来ているだろうか。来ていたら、と口を歪める。あいつらはまた、心配するような口ぶりで俺のことを嘲笑うんだろう。

「……っし」

 俺は力強くボタンを押す。起動音を聞きながら、トントンと指でキーボードを叩いた。心臓が速く脈打っていて、落ち着かない。
 立ち上がった後、ソフトを立ち上げて表示されている文字を見て肩を落とす。

「……ああ、やっぱり、来てる、か…」

 新着メッセージ、五件。未読メッセージ、百件。新着メッセージは俺個人に送られてきたもので、未読メッセージとはチャットみたいなもので交わされたものが残っているものだ。俺はまず未読メッセージのページを開いた。他愛ない話を冷めた目で流していくと、意味不明な会話を発見して眉を顰める。

リョウ:そういや、レイン、こっちに顔出さなくなってきてるよね。今日訊いたときも何か焦ってたし。
KM:確かにそうだな。…あいつ、本当にレインなのか?
アゲハ:でも本人が言ってたし…。

 ――今日訊いたときも焦ってた…? 本人が言ってた……? どういう、ことだ…? 俺はここから出ていないから、こいつらに会ってなんかいない。それに、俺がレインだなんて言ったことも当然あるわけがない。
 誰かが俺――レインの名を騙っている?