クソ会長のことが好き。ずっと目を逸らしてきたそれに向き合う時が来た。認めてしまえば、楽になるだろう。でも、俺はどうしても認めたくなかった。プライドと、そして罪悪感。その罪悪感は、日向と翔太に対してのものだ。それに、認めたとしてももう失恋しているのも同然だ。クソ会長は翔太が好きだし、翔太も…然り、だ。それに隣に並ぶのだって俺みたいな男より、翔太の方が断然に良い。

「ねえ、淳ちゃん…。嘘吐かないで、本当のこと言ってよ」

 真剣な目で見つめられ、目を逸らすことができない。俺は、ごくりと唾を呑み込んで、口を開く。

「……お、れは…。あいつが、好きなんだと…思う」

 言った。言ってしまった。自分自身の言葉がすとんと胸に入り込んできて、まるでずっとそうであったように、クソ会長への想いが広がる。
 しかし、日向の顔を見てそんな甘い想いが弾け飛んだ。ぽろぽろと涙を流す日向を見て、ずきりと胸が痛んだ。

「俺には…淳ちゃんしかいないのに」

 小さく呟かれた声はすぐに消えたが、耳にその言葉がこびり付いた。



 屋上にはいられないし、教室にも戻りたくなくて、寮へと帰って来た。ごろりとベッドに横になり、息を吐き出す。どっと疲れが出て重くなった体を柔らかい布団が受け止める。

「好き、か」

 クソ会長に対する好きが恋愛的な意味だとするなら、翔太への好きはなんだったんだろう。俺はずっと翔太をそういう目で見ていたと思っていたけど、そうじゃなかったのかもしれねえ。でも、日向のような好き、でもなくて…。
 …くっそ、訳分かんねえ。チッと舌打ちをするが、布団に顔を押し付けていたのでくぐもった音になった。眠くはないが、考えるのが面倒になって目を閉じる。しかしベッドで寝転がっているせいだろうか。恐らくベッドが柔らかく気持ちいいというのもあるだろう。徐々に頭がぼんやりしてきて、いつの間にか眠りに落ちていた。