(side:???)
 入学式なんて、怠い以外の何物でもない。俺は机に足を乗せて欠伸をする。周りは俺と目を合わせようともしない。俺のこの見た目か、素行か、それとも…兄貴の所為か。なんにせよ、女子まで目を合わせてくれないのはちょっと辛い。中学は男子校だったから、女との絡みなんてあまりなかった。街歩いてるとビッチとかギャルな女は近づいてくるけど、俺は清楚な子がタイプなんだよ…。斜め前にいる黒髪の子とかさあ…。
 そんなことを考えていると、教室のドアが開く。先公でも来たのかと思って顔を上げると、ドアを開けた奴と目が合った。黒縁眼鏡を掛けた、ハニーブラウンの髪をしたイケメンだ。

「……?」

 初めて見る顔なのに、何だか既視感を覚えて首を傾げる。こんなイケメンだったら、覚えてると思うんだけど。じっと見ていると、何故か向こうもこっちを凝視してくる。教室はイケメンの登場に、息を吹き返したように騒がしくなる。

「おい、圭。何で突っ立ってんだよ。早く入れ」
「あ、ごめん」

 イケメンがドアの外に向かって謝り、教室の中に足を踏み入れる。周りの奴らは俺のことなんか忘れたようにイケメンを見ている。あっ、あの黒髪の子も見てる…。心なし顔が赤いような…。がっかりしていると、イケメンの後に入ってきた奴を見てギョッとした。これまたイケメンだ。そして、派手だ…。俺だって不良に属される類だけど、あれはあれで問題児だろ。

「アッキー席どこ?」
「知らね。テキトーに座っとけばいいんじゃねえの?」

 二人は親しげだ。金髪のイケメンは割と気さくな奴っぽい。

「…おい、何見てんだよ? 俺らは見せもんじゃねえぞ」

 ……そうでもないかも。金髪イケメンの言葉にクラスの殆どがさっと視線を外す。

「アッキー顔怖いけど」
「や、だって視線ウザイし。お前気にならねえの?」
「もう慣れた」

 ここ座ろう、と言って俺の前の席を指差す。何故そこ? 他に空いてる席結構あるけど…まあ、いいか。
 黒髪イケメンが席に着くと、早速黒髪の子が話しかける。

「あの…名前、なんていうの? 私、黒谷光」

 ほう…黒谷さんか。

「俺? 岡崎圭って言います。コイツは木島晃生。宜しくね」
「う、うん…!」

 ……え? 岡崎圭?
 聞き覚えのある名前に俺は目を見開いた。