クソ副会長は悔しげにこっちを見ると、踵を返して食堂から去った。空音も溜息を吐いて、後を追うように出て行く。
 俺たちもそろそろ出るかと立ち上がった。食堂を出ると、翔太と反対の方へ歩き始める。そんな俺に慌てて声をかけた。

「あ、おい! 淳也、どこ行くんだ? もしかしてまた…」
「あぁ、サボる」
「え〜…淳也いないと寝れないじゃん…」
「お前なぁ…」

 俺がいなくて困るのはそれだけかよ。俺は苦笑する。

「生徒会が来てどっかに連れて行かれそうになっても絶対行くなよ。あと、すぐに行けるか分かんねえけど、俺に連絡しろ」
「あー、うん。分かった」

 ぐしゃぐしゃと髪を撫で回すと、文句が飛んできたが無視して撫で続ける。…さっきのことは、もう親衛隊に知れ渡っているだろうか。ここで一人で返すのは危険かもしれないな。こっそりと周りを見ると、風紀委員の紋章を付けた奴を発見した。…風紀が動いているのなら、少し安心だ。風紀委員に口パクで頼んだ、と言うと、そいつはしっかり頷く。

「おい淳也! いい加減撫でるの止め――」
「じゃ、俺行くな」
「え、あ、うん…」

 俺は翔太の頭からするりと手を放すと、翔太は目をぱちぱちと瞬かせて不思議そうな顔をする。それに笑い、今度こそサボリに向かう。



 中庭のベンチに腰掛け、携帯を取り出す。アドレスから幹太の名前を探し出すと、着信した。

『もっ、もしもし!』

 キーンという音が鳴るほど大声がダイレクトに届き、俺は耳を押さえる。

「うっせえ! もうちょっと声抑えろよ馬鹿!」
『ああ!? んだよお前が電話してきたのが悪い!』
「意味分かんねえ! つかお前が電話しろって言ったんだろ!」
『え、な、何で知って…!』
「空音から聞いた」
『あ、あいつ…。ま、いいや。で、何? 何か用なんだろ!?』

 何故だか嬉しそうな声に首を傾げながら、いや、と言う。

「別に何もないけど」
『はあ!?』
「あ、そうだ――」
『何!?』

 だからうっせえ! 声抑えろって!

「お前、あんまり空音に無駄電話すんなよ。あいつ今疲れてんだから」『……はぁ…』
「何だよその溜息。だから直接俺の携帯にかけろよ」
『えっ…。お、おう!』

 テンションの上下ポイントが分からんが、何か機嫌良いみたいだから余計なことは言わないでおこう。