結局、授業を受けずにずっと寝てしまっていた。

「っぁー、ねみぃ」
「えっ、あんだけ寝といて」

 背伸びをして欠伸を漏らすと、横で翔太が呆れた顔をする。

「……あれから、なんもなかったか?」
「いや、特に何も。そういえばさっき、色々助けてくれてサンキュ」
「別に。あいつら気に食わなかったし。…お前、気をつけろよ」

 笑みを浮かべて礼を述べてくる翔太に真剣な顔でそう返す。翔太はここに来たばかりで、まだ親衛隊の恐ろしさを知らないからこうやって笑っていられる。…できれば、知らないままでいてほしいところだ。かと言って俺がずっと傍にいてやることも勿論できない。俺といることで、少なからず翔太い悪意が向いているのだから、距離を置いたほうがいいのかもしれないけど。でもクソ副会長とクソ会長が絡んできて抵抗もできないまま生徒会室に連れて行ってしまったりしたら、状況は悪化してしまう。

「…淳也?」
「あ?」
「ボーッとしてどうした?」
「…ああ、いや、なんでもない。兎に角、生徒会の奴らを見かけたら人目のあるところではあんまり話すなよ」
「おう。気をつけとく。まあ気にしすぎだと思うけど」
「お前なあ」

 思わず語尾を強めてしまい、慌てて口を閉じる。俺は、翔太と恋人の関係になれないかもしれないけど、それでも翔太にはいつでも笑顔でいてほしい。中途半端に言葉を口にした俺を不思議そうに見る翔太にかぶりを振って笑うと、ますます不思議そうになる。

「じゃ、帰るか」
「そうだな。あ、ノートいる?」
「サンキュ、貸してもらうわ」

 今日一日分のノートを受け取り、鞄に入れると立ち上がる。窓からクソ会長の姿と親衛隊っぽい奴が立っているのを見つけてしまい顔を歪める。教室のドアのところで翔太が俺を呼ぶ。窓から視線を外し、教室を出た。



 夕飯を食べて明日の買い出しに行った帰り、どこからか人の話し声と物音が聞こえた。不審に思って辺りを見回す。ガタガタと激しく鳴る音。……親衛隊の制裁や誰かを襲っている可能性がある。耳を澄ませて音に近づき、談話室のドアを開くと、予想外の光景が広がっていた。ドアが開いたことで中にいる二人がこっちを向いた。――乱れた服の可愛らしい男、そしてそいつに覆い被さっているのは……。

「クソ会長…」

 クソ会長は俺を見ると、にやりと口角を上げた。