「あ、…はあ」

 大穂はポカンとした顔で俺を見上げると、気の抜けた言葉を漏らした。瞳に恐怖は宿っていなくて、俺は安堵する。

「意外にちゃんとしてんだな…」
「え」

 ぽつりと呟かれたそれは、俺の耳までしっかりと届いた。癖で、反応した時にぐっと眉を寄せてしまった。思わず漏れてしまった様子で、忽ち青くなるとぶんぶんと顔を横に振って慌てた。

「い、いや、これはその…っ!」
「えっ! あ、いや、いいんだ。ごめん、俺、人見知りで――」

 俺が不快に思ったらしいと勘違いしたらしく、あわあわと文になっていない言葉を発している。兎に角誤解を解きたくて、声を大にして謝る。いつもなら言葉に詰まって言えない言葉が、するりと出て来たことに驚いた。そして大穂も驚いたようで、目を見開いて口を開けたまま停止した。

「……え、人見知り?」

 数秒後、確認するように訊ねられたそれに、俺は頷く。

「そ、っか…。じゃあ、あの…俺、ここにきたばっかでまだ友達いなくて。良かったら…仲良くしてくれないかっ?」

 !?
 まっ、まままままマジで!? 俺は目を見開いて大穂を見つめる。

「あ、い、やだったらいいんだけど…」

 俺が黙っていたからか、小さい声で呟いて、眉を下げると俯いてしまった。俺は慌てて首を振り、口を開いた。

「嫌じゃねぇ! お、俺全く友達いなくて…! こっちこそ、と、もだちに…っ」

 なって欲しい、そう言うと、大穂は顔を上げて笑顔を浮かべた。俺も嬉しくなって、出来る限りの満面の笑みを作った。
 すると、いきなり大穂が頭を抱えて蹲み込んで、小さく呟いた。

「あー…これが、ギャップとかいうやつっすかね…」

 …ギャップ?