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「つまり、俺に彼氏役を頼みたい――そうだね?」
「っ! そう!」

 小竹さんはうんうんと頷く。

「いいけど」
「ありがとう! 助かるよー」

 ぎゅっと抱きつかれ、目を丸くする。なんだろう、なんか……違和感を覚える。それが分かる前に小竹さんは離れていき、満面の笑みで俺を見上げる。

「同じ学校の人?」
「そうなの。えーと、先輩なんだけどね」
「……先輩なのか」

 それはちょっと、面倒そうだな。しかしもうやると言ってしまったし…。こんなに喜ばれて断るのは胸が痛い。

「どんな人なの?」
「……会ったら分かるよ」

 ぼそりと吐き捨てるように言われた言葉。……同じような言葉をさっきも聞いたような。
 どういう先輩なのかを想像しながら、小竹さんと連絡先を交換した。

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