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 羽取が車を止める。俺に素早く降りるように指示をし、荒々しくドアを開けた。俺もドアを開け、降りると目を細めた。暗くて良く見えないが、小屋のようだ。窓から覗く室内は暗く、無人ということが分かった。

「さあ、入ってくれ」

 羽取が鍵とドアを開け、促す。部屋の中は異空間のように真っ暗で、中の様子は全然分からない。足を踏み出す。瞬間、言いようのない不安が俺を襲った。部屋に入ってはいけないような気がする。

「どうした?」

 少し語気が強くなる。中々入らない俺に焦れているらしい。俺は何とかしてこの騒ぐ胸を教えたかったが、伝える術もないし、仮に伝えられたとして羽取が言うことを信じる可能性は少ない。更に今は冷静さを欠いている。――仕方ない。俺は唾を飲み込んで、中に入った。
 羽取が腕を掴む。びくりと反応すると、羽取が取り繕うように言った。

「ここは電気が通っていない。逃げられたら困る」

 俺はそこで、はたとあることに気がついた。もしかして、羽取を振り払うことができれば、俺は自由なのでは…? 龍崎や須藤はともかく、俺の姿が見えない羽取。更に、龍崎たちの協力は得られない。今はチャンスなんだと思うと、先程とは違う意味で振動がどきどきとし始めた。

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