ヤンキー金山のパシリくん

不良×イケメン寄り平凡/パシリ/暴力表現有/
※未成年の煙草や喫煙は法律で禁止されています!






 憂鬱だ。
 俺は朝目が覚めると、毎日憂鬱な面持ちで天井を見つめる。布団から出たくない。というか、学校に行きたくない。勉強は嫌いだし授業も怠いが、憂鬱だと思うほどではない。俺をここまで憂鬱にさせるのは、ある男の存在である。
 金山雄平。一年B組。身長百八十センチ以上。プリンになった金髪。ピアス。強面。眉間の皺。着崩した制服。猫背。煙草。――奴は、不良だ。良く問題を起こして先生に呼ばれたり、サボったりしている金山は、見た目は怖いが根は優しいとかいうギャップのあるタイプの不良ではない。暴力は振るうわカツアゲはするわ、気に入らないことがあればすぐに物は壊すわ、とにかく厄介な人物なのである。
 俺はそんな問題児、金山と同じクラスである。同じクラスだけならまだいい。関わらなければいい話だ。しかし、俺の苗字は唐津である。金山の次が唐津である。つまり、俺の席は金山の後ろというわけだ。真っ黒な集団の中に一人黄色い人物がいて、そいつが見るからに不良だったから俺は最初、凝視してしまった。それが悪かったのか、偶々振り返った金山と目が合い、意味ありげに笑った金山は俺にこう言った。

「おい眼鏡、俺喉渇いたんだわ。買って来いよ」

 俺が眼鏡で、見るからに真面目で弱そうだったから使えると思ったのかもしれない。最初何を言われたか理解できず、呆然としていたら机を蹴られ、ギロリと睨まれた。俺は慌てて立ち上がり、飲み物を買いに行った。――俺は、あの日から金山のパシリになった。
 金山が事あるごとに俺に絡むせいで、入学して二ケ月経つが友達と呼べる奴は一人としていない。教師ですら俺と関わりたくなさそうにしている。悲しいし助けを期待しないわけではないが、仕方ないことだと思う。俺だって、皆の立場だったら絶対に関わらないからだ。
 姉貴に起きろと言われ、渋々布団から這い出る。……憂鬱だ。今日は金山が来なければいいんだけど。というか、今日だけとは言わず、毎日サボってくれ頼むから。

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