国が大変な時にタイムスリップした俺の話

タイムスリップ/警官×警官/目指せシリアス







 時は二XXX年。日の国は滅亡の危機に瀕していた。俺の故郷は幼少の頃に滅亡してしまった為に、連れてこられたのが日の国である。俺は国を守る役人に育てられた。両親は戦地に向かったきり、帰ってこない。
 俺は空を見上げた。スモッグで汚染された空――ではなく、澄んだ青が広がっている。俺は思わず見惚れた。こんなに素晴らしい景色を今まで見たことがあっただろうか。いやなかったはずだと自問自答しながら辺りを見合わす。滅亡寸前の景色とは思えない。どこも焼野原になっていたはずだ…。ここは、どこだ。誰か、人は…。俺は首を動かしている内に視界に入った人の姿にぎょっとする。薄っぺらい布を纏った男が一人、だらしなく歩いている。

「そんな…」

 脳裏に本で読んだ、「日本」が浮かんだ。日の国と呼ばれる前――戦争が終わり、再び始まる間、平和な時代があった。それが日本だ。今では純日本人など絶滅危惧種のような存在で、知人がどこの国から流れてきたか、自分にどの血が流れているのかすらはっきり分からない。しかし、目の前を歩いていく奴らは、確かに純粋な日本人……純人だった。重装備な俺とは違って、誰もが身を守ることなどできなさそうな服を着ている。……これは、夢だろうか。自分の手がぶるぶると震えているのに気づき、ぎゅっと力強く握り締める。こんなことで怖がってどうするんだ。こんなんじゃ、日の国を守ることなんてできないだろう。じっと手を見つめていた俺は、人の気配を感じ、振り返る。ポケットに入っているナイフに手を添えながら。
 男は驚いたように目を瞠って、直ぐに顔を引き締めた。純人であるが、彫りの深い顔だ。浅黒い肌をしているそいつは、青い服と青い帽子を身につけていた。この服装にも見覚えが有る。何故なら……俺が着ているこの服は、この青い服が元になっているからだ。つまり、お国を守る役人である。

「…その服装は」
「制服だ」
「制服? 何の仕事をなさっているんですか」
「ポリスだが」
「は」

 男は顔を引き攣らせる。俺は再び男が口を開こうとするより前に問いかけた。

「今、何年だ。元号は、…っ国の、名前は」
「は? え、ちょ、ちょっと」

 男の顔が変なものを見たような顔をした。しかし俺が真剣な顔をしていたからか、素直に教えてくれた。

「元号は平成で、二0XX年。国は日本です」
「平成!?」

 平成……数百年前の元号だ。国名も、まだ日本。俺の予想は当たってしまった。ここは……過去だ。


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