電波な宇宙人が人類を滅ぼすらしい

見た目ホストな電波宇宙人と大学デビューした少しチャラい大学生/ギャグ












「一週間後に人類を滅ぼすんで、そこんとこヨロ」

 俺の部屋の前に座り込んでいた大柄な男がそう言って、ピースした。










 その日は確か、いつにも増して日差しの照っている、暑い日だった。大学進学のため上京してきた俺の毎日は順調だった。友達もできた。講義も楽しい。もうすっかり慣れた通学路。友達と大学前で別れて、途中コンビニに寄ってアイスを買ってから借りている学生マンションに帰る。そこまではいい。問題はそれからだ。
 人だ。知らない奴が部屋の前にいるんだよ。しかも、座って。こんな昼間から酔っ払い? と思って近づくと、俺に気付いたそいつは顔を上げる。思わず息を飲んだね。すげーイケメンなんだ。しかも、なんてーの、フェロモンダダ漏れ? ホスト? ってくらい色気があった。こりゃそこに立ってるだけで女が寄ってくるんだろうな。しかし頭がおかしかった。
 無表情のまま、そいつは俺を指差した。

「人間」

 ええ。確かに人間ですとも。俺は若干引き気味で頷く。そしてお前も人間だと言ってやった。すると、そいつはぴくりとも表情を動かさず、首を振った。

「俺は人間じゃない。宇宙人だ。そんでさっき地球に来た。ちょうどここが目に入ったからここに住むことにした。入れて」

 いや入れてじゃねーよ。ツッコミどころが多すぎて何からツッコんでいいのか分からなかった。とりあえずこの男の頭がおかしいことは分かったので、無視して部屋に入ろうとした。しかし男は座り込んだまま。しかも無駄に体が大きいので退かすことができない。俺はふと手に持っているビニール袋の中――アイスの状態が気になった。暑い。俺もアイスも溶けてしまうくらいに暑い。

「退けよ」

 漸く絞り出した声は、少し掠れていた。そいつは首を傾げて俺を見上げる。

「人間」
「なんだよ」

 そして言うのだ。「一週間後に人類を滅ぼすんで、そこんとこヨロ」――と。
 軽いわ! そこんとこヨロじゃねーよお前無表情でピースとかこえーよ!


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