三人迫れば青息吐息

美形×平凡/総受け











 学校帰りの出来事だった。
 天気予報では一日中快晴だった。なのに、突然の雨。スコールとまではいかなかったが、結構な量が降ったせいで俺はびしょ濡れだった。急いで駅に入り、肌に張り付く髪と服が気持ち悪くて顔を顰めた。生憎、今日は拭くものを持っていない。
 このまま電車に乗るのもなあ、と思っていると、がしりと肩を掴まれる。ぎゃっと悲鳴を上げて振り向くと、あらまあなんと男前なお方ですこと。モデルのように整った顔立ちの男――しかも背も高くてすらっとしている――が、じっと俺を見下ろした。何故かタオルを差し出され、反射的に受け取った。知り合い…な筈はない。こんな美形と知り合いだったら絶対に忘れない自信がある。となると、ずぶ濡れの俺を気遣って…? なんていい人だ。しかし、いい人、という言葉は直ぐに撤回されることとなる。

「好きだ」

 数秒間フリーズ。好きだ、という言葉が何度か頭の中で復唱された。

「はっ?」

 ていうか誰。

「好きだ」

 しかも無駄にいい声だし。キメ顔だし。

「えっと…俺、男…」
「ああ」
「君も男…」
「ああ」

 ……いやいや、何当たり前だろ的な顔で見てくるんだよ! そっちの趣味の人か!? やべー初めて会ったよ!

「付き合え」

 ところで何でこの人こんなに上から目線なの? 告白も全然気持ちが伝わって来ないし、こんなに整った顔なら女子も放っておかないだろ……はっ! そうか! これは何かの罰ゲームか! そりゃそうだよな、何俺真剣に考えてたんだろ。

「無理です」
「却下」

 えっ、却下って。

「好きだ。付き合え」

 仕切り直しとばかりにもう一度同じ言葉を言ってくる男前。もうちょっと言い方くらい変えろよ…と思いながら、愛想笑いを貼り付ける。

「いや、ホント無理なんで。じゃ!」
「あっ、おい!」

 後ろから声をかけられるが、無視して改札口を通る。流石にここまでは追っては来ないようで、ほっとした。

「あ…」

 やべ、タオル持って来てしまった。なんか凄い柔らかい素材だし、高いんじゃなかろうか…。タオルを手に暫く悩んだが、有り難く使わせてもらおうと思い、髪を包み込んだ。



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