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「なんだ、普通にまともなの読んでんじゃん」
馬鹿にしたような言い方にむっとしたが、加治が本当に驚いているように見えるので、何も言えなかった。
気を取り直して、好きな作者の名前を探すが、加治がじいっとこっちを見てくるのが非常に気になる。……俺を監視しているのか? 勝手に帰ったらなんか言われるだろうし、見張らなくてもいいのに。
「…加治は、本読まないの」
居たたまれなかった俺は、加治に訊ねかける。質問されると思っていなかったのか、加治は目を丸くして俺を見た。
「俺?」
俺は無言で頷く。加治は少し悩むように視線を宙に遣ると、そうだな、と小さく呟いた。
「…漫画?」
言っておくが、漫画は俺の中で本には入らないぞ。そんなことを思っていると、呆れが顔に出ていたのか、加治はじろりと俺を睨んだ。
「なんか文句あるか?」
「…いや、何も」
「何もって顔してねえし」
むすりとむくれるその顔が年相応というか、少し子供っぽくって、俺は初めて加治の優位に立ったように感じた。
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