会長

(会長×泰)








 部屋に帰ると、ソファーに我が物顔で座っている会長がいた。

「……は?」

 いやいや、何故ここに? っていうか、一は? まだ帰っていないのか?
 目を瞬いて会長を見ると、俺が帰ってきたのに気づいたらしく、俺の方を向く。

「遅かったじゃねぇか」
「えーと…どうして部屋に?」
「お前、何か俺に渡すもんがあるだろ?」

 俺の質問を華麗にスルーしたぞ今。渡すものなんて、別にないんだけど。意味が分からなくてそのまま立ち尽くすと、いきなり会長が目を鋭くしてぐっと眉を顰めた。

「お前…」

 視線は俺の手元に向く。俺の両手には、下駄箱や机や、直接手渡しをされたチョコレートが入っている。正直男に貰っても、と言う感じだが、貰えるものは貰っておこう主義だからな。了たちが危ないものが入ってる可能性があるから充分気をつけろと言っていたが、……あるのだろうか、そんなこと。危ないものってーと、下剤とかか?
 そういえば、偉く不機嫌そうな顔で、俺にチョコはないのかと訊いてきたな。何で俺が男にチョコやらないといけないんだよ。そう言うと、酷くショックを受けたような顔をして、控えめにチョコを渡されたな。凄い高そうなやつ。いや、寧ろ貰ったものの殆どがゴディバ級のチョコなんだけど。
 因みに、一や山田、御手洗たちからもせがまれたな。了の時と同じ台詞吐いたら、まあ、納得していたけど。

「それ、何だよ」
「……何って、チョコですけど」

 過去に苛められていた杷木千尋でさえも紙袋に一杯入るくらいになるんだから、当然会長ともなると凄い量なんだろうな。そんなに食べたら胸焼けする、絶対に。

「…ッチ」

 苛立たしげに舌打ちすると、俺の方に近づいてきた。俺は会長が近づいてくると共に一歩下がる。何だか酷く嫌な予感がするんですけど。っていうか、会長のオーラ怖っ。

「俺には」
「はい…?」
「俺にはねぇのかよ」
「は…」

 何だ? 何故俺に貰いたがるんだよ皆。色んな奴から貰ってるだろ。

「生憎、男にチョコやる趣味はないん……っ!」
「くそ……っ!」

 いつの間にか、壁際まで追い詰められていたらしい。肩を強い力で掴まれて、壁に背中を打ち付けられた。
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