会長

(会長×泰/恋人設定/甘々)

会長が気持ち悪い。泰も気持ち悪い。
全体的に気持ち悪い。
宜しい方はどうぞ!











 クリスマス。それは恋人たち限定のイベントだ。そのクリスマスの当日、俺は愛しくて仕方ない、数多もの試練を乗り越えて勝ち取った恋人と過ごしている。……のだが。
 ――ずるずる。ずずっ。

「……なあ」

 ――ずるずる。
 ごくりと飲み込んだ音が聞こえ、目の前にいる恋人は不思議そうな顔をして俺を見た。

「何」

 淡白すぎるその言葉と声音を発すると、俺の言葉を待たずに、またずるずると音を立て始めた。

「おい! 食べんのをやめろ! 何だよこれ!」
「…は? 何って、ラーメンじゃん。早く食べないと伸びるぞ」
「あ、やべ、確かに微妙に汁少なくなって……って、ラーメンじゃん、じゃねぇよ! 知ってるわボケ!」

 声を発する勢いとともに立ち上がり、恋人――千尋を見下ろす。興味なさそうに俺を一度見上げ、直ぐに視線を落とすと、麺を啜り始めた。もう千尋の器には麺が殆ど残っていないが、対照的に俺の物は汁をどんどん吸って、明らかに麺の体積が増加している。絶対にこれ、もう美味しくない。いや、今はそんなこと、どうでもいい。仮にも恋人にする反応じゃないんですけど、これ。無関心すぎやしないか、お前。

「じゃあ何が言いたいの」
「俺が言いてぇのは! 何故ラーメンなんだ!? 今日クリスマスなんですけど!?」
「別にクリスマスにラーメン食べちゃいけないなんて決まりないし。……ラーメン、好きなんだろ」

 少し眉を顰め、上目遣いに俺を見つめた。その不満そうな顔で、俺を睨んでるつもりなんだろうが、可愛らしい仕草に感じてしまう俺はもう末期だ。
 っていうか、え、このラーメン、俺の為に…? 驚いて千尋を見つめていると、恥ずかしいのか、少し頬を染めて視線を逸らした。俺は座ると、ニヤリと笑った。

「何だよ、早く言えよ、全く素直じゃねぇの」
「キモッ」
「俺今傷ついた…」

 満足そうに完食した千尋は、俺を心底ウザそうに見て毒を吐いた。俺は顔を引き攣らせてすっかり伸びきったラーメンの横に右頬をテーブルに付けた。
 ……俺たちって本当に恋人なんだろうか。愛を感じないんだが。脳裏に了のドヤ顔が浮かんで、苛々と何とも言えない虚しさが俺の胸を占めた。了にこんな発言しないのに、俺には言うって、一体どういうことだよ。
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