ちい姫さまの恋事情
路唯  8/16



目を、覚ます……?


「どうかおやめ下さい、有明の宮さま」


「右兵衛佐」


「ちい姫は……この子は何も知らぬほうが良いのです」


兄さまが宮さまからかばうように、私を片腕で引き寄せる。
宮さまの声を聞こえにくくするように、頭ごと袖で隠された。でもそれは申し訳程度にしかならない。


「柾路を結婚相手として推してしまった私に責任があります。どうか、この子には何も……」


「それで全てを知ったちい姫が正気でいられると?」


「分かっています。されど……」


「僕は」


一際大きく、宮さまの声が響く。
兄さまでなく、私に語りかける声。今まで耳を塞いで聞かないようにしていた。聞きたくなかった。


「"何を知っても、これから何が起こっても、大丈夫だよね"ってちい姫に聞いた。ちい姫はそれを承知して、衛門督を探して欲しいと言っていたよね。皆それに応えている。だから、ちい姫が本当のことから逃げたらだめなんだよ」


宮さまの容赦無い言葉。
私の弱さを、本質から逃げてしまうずるさを、責め立てる。

何を知っても、これから何が起こっても。
あの時の宮さまは私が傷つかないように守って下さっていたのに、ずけずけと何も知らず踏み込んでしまったのは、私のほう。
それなのに、前を見ようとせず、現実を受け止める勇気もない私には、この場にいる資格なんてないのだわ。

自ずと手が震える。
でも向き合わなきゃ。ちゃんと、宮さまの目を見なければ。


「宮さま……!ちい姫は」


「だい、じょうぶです。兄さま……わたくし、ちゃんと分かっていました」


自分から兄さまの腕を離れ、正しく座り直す。
視界が霞むけれど、堪えるの。

柾路さまが、本当にすきだから信じたくなかった。
私の部屋が瞬く間に燃え広がった時から、僅かな疑問が膨らんで、柾路さまの姿が見えなくなった時から確かなものになった。

信じたくなくて、やるせなかった。
夢に見た柾路さまの、私を冷たく見ていた顔が浮かぶ。

だって、私は柾路さまに。


「柾路さまは、わたくしを殺めようとしていたのですね」


ずっと憎く思われていた……。
それが悲しくて、つらくて。正面を見ることが出来なかったの。





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