ちい姫さまの恋事情
路唯  6/16






夜も更けた頃、私と兄さま、道楽、そして宮さまが顔を揃えた。
まだ体の自由がきかない私のために、宮さまと道楽が私の寝ている部屋に足を運んでくれたみたい。

宮さまがわざわざ私の体調を気にして下さったのに、顔を直接見ることができなくて、兄さまの影に隠れて小さく頷き返してしまう。
僅かに苦笑したらしい宮さまが、私から一番離れた場所に腰を下ろしたものだから何となく心苦しい。

だって、悪いのは宮さま……だもの。



「ゴホン」


私と宮さまの間に流れる空気に気付いたのか、道楽が大きく咳払いをしてから静かに本題に入る。


「お姫さんが言った通り、衛門督は寺院にいた」


その短い一言に、私は素直に嬉しくなる。どこにいるか、全く分からなかった柾路さまが見つかった。
ただそれだけが、今の私にとって一番重要な言葉だった。

続いた言葉はあまり期待できなかったけれど。


「だが……衛門督本人には会うことが出来なかった。寺院にある蔵(くら)に籠もり、出て来ねぇんだと」


「柾路が寺籠もり……か。引っ張りだすことは出来ないのか道楽」


「やろうとしたんだんだがな。僧侶共が盗賊である俺に、神聖な場所へ入って欲しくないと邪魔して来やがったんだ。まぁ汚れきっているのは仕方ねぇんだけどな」


道楽は疲れきった表情をして、頭を掻く。短く切り揃えられた髪の毛を、がしがしと。

確かに、道楽は盗賊の頭。だから今まで物を盗んだり、人を傷つけたこともあったと思う。
でもここに来て、彼があまり盗賊らしくないと思うのは何故なのかしら。
言うなれば立ち振舞いが他の郎党たちとは違う、品がある気がするの。

気のせい……と思いたい。


「本人が見つかっても出てこないのでは、どうすることも出来ないね……」


小さく落胆した宮さまを見て、何かに気付いた兄さまが提案する。


「盗賊である道楽が行ったからできなかったのだろう?貴族である私が行けば、柾路を出すことが出来るのではないか?」


その問いには否定の声が返ってきた。


「俺が無理だったから、知り合いの阿闍梨に頼んだのさ。だがそれでも出てくる気配は微塵もなかった。”ここから出ない”と駄々をこねる童のような返答があっただけだ」


「そうまでして頑ななのは、彼が何か隠しているからじゃないかな?例えば……小さな青火の内に秘めた、大きな炎みたいな何かをね」


皆で囲んだ燭台を見つめながら、穏やかな笑みを浮かべる宮さま。

いつも落ち着いていて大人な柾路さまが内に秘める、熱い炎みたいな何か。
それを知ってしまったら、私の知る柾路さまではなくなるような気がした。


……そもそも、私の知る柾路さまってなに?


私は柾路さまの何を知っているのだろう。




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