ちい姫さまの恋事情
路唯  4/16




「若君?姫さまのご様子はどうですか?」


頃合いよくささらが部屋に入ってきたので、兄さまの気がささらに逸れる。
私はほっと胸を撫で下ろし、起こそうとしていた体を元に戻した。

宮さまは、心に悪いものを残していったのね……。色々な意味で。


「熱はまだあるようだが、顔色は良いようだ。話す元気もあるようだし」


「それなら良かったです。姫さま、粥をお持ちしましたが、お召しになりますか?」


ささらが持つ膳には、先ほど作られたと思う出来立ての粥が器に盛られ、美味しそうに湯気を立てている。
途端、私の体が空腹感を思い出したかのように反応し、袴の結び目辺りから音が鳴る。

少し恥ずかしかったけど、ささらに頂くわ、と返事を返した。





兄さまに背を支えられながら、ささらが持ってきた粥を口に運ぶ。
この粥もささらが作ったと言っていたけれど、やっぱり美味しい。


「ありがとう、ささら。とても美味しい粥だったわ」


きちんと食べきり、ささらにお礼をすると次に変な色をした湯を持って来た。


「ちい姫。熱に良く効くという薬を典薬寮から頂いた。苦いらしいが、飲むといい」


恐る恐るささらから薬湯を受取り、匂いを嗅ぐ。
……正直言って、あまり良い匂いとは言えないわ。
でも兄さまがせっかく頂いて来たのだし、飲まないといけない……のよね。


兄さまとささらが見守るなか、私は薬湯をぐいっと飲み干す。急いで飲んだほうが苦味が残らないと思……とても苦い。
少々どころではない苦味と、湯に溶けきれなかった固形物が口の中で存在を主張し、私に苦しみを与える。

ささらが機転を利かし白湯をくれたからまだ良かったものの、そのままだったら吐き気を催していたかもしれない。
「良薬口に苦し」とは良く言ったものだわ……。


薬湯を飲み終え落ち着くと、兄さまが私の体をやんわりと押した。


「また少し、眠るといい。そなたには休息が必要だ」


「でも……兄さま、柾路さまのことは……」


まだ柾路さまの事を聞いていないのを思い出したけれど、兄さまは首を横に振る。


「今日は左大臣家を尋ねられなかった。そして寺院に行っている道楽はまだ戻ってきていない。このまま起きていても有力な情報は得られないだろう」


「……分かりましたわ、兄さま」


ここは素直に聞いた方が良いわね。情報がないのでは、話しようが無いもの。

兄さまの手を借り、再び私は横になる。
確かに今、私は体を悪くしてしまっているから。
柾路さまに会えたとしてもこんな姿、きっと見せられないわ。


横になって暫くすると、微笑む兄さまとその後ろに座しているささらがぼやける。
薬湯のせいもあるのか、体が少しずつ温かくなってきた私は、簡単に意識を手放すことができた。





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