ちい姫さまの恋事情
路唯  1/16




気が付くと、私は一人で朝を迎えていた。

昨夜、宮さまがいつ帰ったのかさえ分からない。
あの後強い目眩がした覚えがある以外、記憶が無くなってしまっている。


だって、宮さまがあんなこと、言うから……。

「ただ、まっすぐにちい姫がすきだよ」

なんて……。
思い出しただけでも頭に血が通ってくらくらしてくる。
どうかしてしまっているのだわ、私。

顔が火照って熱があるみたい。


宮さまのお気持ちは、単純に嬉しいの。
でも私には柾路さまが……いらっしゃるし。
とてもじゃないけど、何もかもが小さい私には大きすぎて受け止めきれない。

柾路さま……どうして、いないのですか。
わたくしは、どうしたらいいですか……?



苦しい心をどうにかしたくて、被っていた衣を寄せ顔を埋める。

……!

その衣からふわりと薫る匂いに、私は思わず顔からそれを離し、遠ざける。
思い出したくない昨夜の情景が浮かぶようで、自分の鼻を手で抑えた。


切なくなる、甘い匂い。
私、宮さまの袍(ほう)を被っていたの……!


どう見てもそれは宮さまが着ていた淡色の袍。
私はその匂いを消したくて、自分が着ている襲袿を頭まで覆い被さるように茵に突っ伏した。
普段浮草や他の女房が用意してくれている袿なら、お気に入りの香が焚かれていたけれど、今は焚いてくれる人もいない。

だから今着ているものに、香などついていなくて。

ましてや長時間被っていたために移った宮さまの移り香は、そう簡単に消えそうもない。
あの美しい顔が浮かんで、憎らしく思える。

当の本人はいないのに。
忘れたくても忘れさせてくれないなんて、とても卑怯だわ――。





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