ちい姫さまの恋事情
行 方  14/17



「阿闍梨だって?」


「そなたのような盗賊と、徳の高い僧侶が何故懇意にしているのだ?」


「そんなに驚かなくてもいいだろう。俺にだって坊さんの知り合いくらいいるさ」


誰もが思いもよらなかった道楽の言葉に、戸惑いを隠せない。
私も、道楽という人物がますます良く分からなくなり混乱する。

出会った時はあんなに乱暴者に見えたのに、そうかと思えば何かを統べる者らしく振る舞い、優しく接してくる。
私は戸惑うばかりで、どう接したらいいか分からない。
二面性を持つ彼を敵として嫌えばいいのか、見方として信用すれば良いのか。

謎ばかりが私の頭のなかで賑やかに騒ぎ立てる。


「そもそもよく左大臣家のゆかりである寺院を知っていたな」


「まぁ……な。取り敢えず俺は明日、その寺院へ行ってくる。宮さんと右兵衛佐はどうする?」


「俺もついて行きたいところだが、生憎明日も出仕なのだ。退出して、そのまま左大臣家と柾路の邸を覗くとしよう」


「じゃあ僕は……ちい姫に付いていようかな」


「……えぇ??」


宮さまの的を得ない発言に、私は慌てて兄さまの後ろに回り込んだ。
今の今まで忘れてしまっていたけれど、宮さまはこんな方だったわ……。


「ちい姫は今、色んな情報が入り交じっていて落ち着かないでしょう?だから僕が付いていてあげようかなって」


「有明の宮さま、妹にそのような……」


兄さまが”宮さまがそこまでして下さらなくても大丈夫です”と宮さまを止めるけれど、ただ私に宮さまを近づけたくないだけなのが分かった。
兄さまがまだ宮さまを信頼していないのか、単に私を宮さまに取られたくないのか……。

どちらとも考えられるわね。


「右兵衛佐が言いたいことは分かるよ。誓って何もしないと約束する。ちい姫は今、衛門督の妻になる人だからね。ただ二人で話がしたいと思っていたんだ」


「わたくしと、二人で……ですか?」


「そう」


宮さまと二人で、なんて。
もう会うことも話すことも無いと思っていた。

ただ、ここまで私たち大納言家に良くしてくれているのだし、無碍に断るのも失礼だわ。



私はそう考えて、ゆっくりと宮さまに頷き返した。







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