ちい姫さまの恋事情
行 方  1/17




ささらに案内されて入った道楽の部屋は、何も無かった。
ううん、言ってしまえば茵だけあって、それを上座として置いてあるだけ。

そこに頭として道楽が座っているのなら、まだ分かった。でも、彼の姿はそこにはない。

それというのも、部屋の主である道楽は、冷たい床にあぐらをかいて座っていた。その後ろに、こぢんまりと伸弘が侍っている。
私の姿を見て、道楽が隣を勧めてきたけど、私は足が動かせなかった。


だって、上座に座っていたのは、もう二度と逢わないと思っていた人なんだもの。


「ちい姫……、無事でよかった」


心底安心したような顔。
長い前髪から覗く瞳は、私を見上げていた。

あぁ、そうだった。
この方は、盗賊と、手を組んでいるのだった。だからここにいてもおかしくはないのだわ。


「有明の、宮さま……」


藍の狩衣に立烏帽子。身分をやややつしているつもりに見えるけれど、その持って生まれた身分の気高さは隠せていない。
こんなところに居るのが場違いだと思えるほど、なんだかやけに眩しく思えた。


「お姫さん、突っ立ってねぇでこっち来て座ってくれ」


宮さまから目が離せずにいる私を、道楽が強い力で肩を押すものだから、膝が折れるように座らされた。
そして道楽はささらに命じ、人払いをさせる。


「宮さん。来るのが遅かったじゃねぇか」


「うん、昨日の今日で大変だったからね。燃えてしまった一条大納言家のことで」


燃えてしまった、一条大納言家。
私ははっとして、衣がまとわりつくのも、髪が乱れるのも構わず宮さまに詰め寄った。


「有明の宮さま!わたくしの、お父さま、兄さま、浮草や女房たちは無事なのですか……!?」


邸なんか、どうでもいい。
家族の安否。ただそれだけが、ずっと知りたかった。




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