ちい姫さまの恋事情
ささら  1/16





ここに来て初めて思ったことは、埃っぽいということだった。

もう何年も掃除がされていないかのような、格子から入る外の砂煙が積もる部屋。
それを不慣れな男たちで掃き掃除と調度品の配置を整えさせ、その場凌ぎでしつらえていた。



「大納言のお姫さんだから手荒に扱うなよ。伸弘に目を光らせるよう言ってあるからな」


「へいへーい」


「頭ぁ、こん姫さんひとっっことも喋ろうとせんが、大丈夫かぇ?」



今まで重荷の如く担がれ、ざらざらとした茵の上に降ろされた私に、髭の濃い男が顔を近づけてくる。
どこの訛りだか分からない喋り方で、男は後ろに立っている長身の頭に問いかけた。


「んー……?早馬でここまで来たからな。舌でも噛んだか?」


私はふい、と首を横に向ける。

ここはどこなの、と散々頭に訊いたけれどまったく応えてはくれなかった。
馬で駆けた時間で分かるのは、都から少し離れた場所にあるということ。


つまりここは、この盗賊の隠れ家。
そして私は火事に紛れてこの盗賊の頭、道楽に連れ去れられて来たのだった。

あのあとすぐ道楽に荷造り用の麻布を被せられ、息もうまくできないままここまで来てしまった。
邸はどうなってしまったのだろう。
浮草は、ささらは、柾路さまは……!



「姫さん、強がらんでもえぇに……」


「松のおやっさん、あんまり気にかけるな。このお姫さんはすぐここからいなくなる」


「わたくしを、殺すということ……?」


言葉が喉を突いて出た。
しばらく喋っていなかったから、埃を吸って声が枯れる。


道楽の顔を見ると、驚いた表情をしていた。


「殺すんだったらわざわざここまで連れてこねぇよ」


野郎ども、と低い声を出すと、道楽の合図にその場にいた盗賊達が部屋から出ていく。
たった二、三人なのにまた砂埃が舞い上がった。




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