ちい姫さまの恋事情
抱 擁  1/16





翌日の朝、ぐっすり眠っていた私を浮草が慌てた様子で揺すり起こした。


「姫さま姫さま、起きて下さいまし。殿がお見えになられています」


「……お父さま、が?」


起きたばかりの掠れた声で、私は殿に思い当たる人物を口にする。
この邸で殿と呼ばれているのはお父さましかいない。
そのお父さまが急に来て、私になんのようなのかしら。

父親と言えど身だしなみとかきちんとしないと行けないから、浮草とささらが着替えを持ってきて、顔を洗って準備をする。


「ああいいから、ゆっくり準備なさい」


と外から聞こえるけど、待たせるのも悪いので結局いつもの半分の時間で私は着替えを済ませた。



「こんな朝早くから、どうなさったのですかお父さま。今日のご出仕は……?」


「これからだよ。羽衣子」


久しぶりに、その名で呼ばれた気がした。
いつもちい姫か姫さまなんだもの。

最近はちい姫のほうが名前のように思えてならない。


いつものように優しい笑顔で語りかけるお父さま。
でもそこには普段とは違う、難しそうに考え事をしている姿があった。


「昨日……衛門督が来ていたと聞いたが」


まさか、お父さまから"衛門督"という言葉を効くとは思わなかった。
えっと……もしかしてもう昨日のことがお父さまの耳に入ってしまったの?

それともただの確認?

いずれにしろ邸にいる唯一人の姫に男が通ってきていると懸念してしまっているのかしら。

柾路さまのこと、悪い虫と思われては困るわ。

何よりも私を気にかけてくださってるし、守ってくださるし、優しいし……結婚しませんかって言ってくれたし…………。


私、一人で思い出して何故か急に恥ずかしくなってる。




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