ちい姫さまの恋事情
請い人  1/20




紅葉が枯葉になり、それが地に落ちて土へと還る。

空からは白い淡雪が降り始める季節に代わり、衣更えがようやく意味をなしたころ、私は御簾の外をのぞくのが日課になっていた。



あの宴事件からひと月あまり。
あれから柾路さまは三日と開けずに私のもとへ来て下さるようになった。

それはもちろん、私が安全な生活を送っているかの確認のためで……兄さまの妹だから心配してくださってるだけ。

でも顔を見ることができるだけでも、私はとても嬉しいの。



御簾で見えないと分かっていても、髪は乱れていないかとか、袿の柄はおかしくないかとか気にするようになった。

そんな私を見て、「姫さまも色気付くようになりましたのね」なんて浮草に言われて。
思わずむすっとしてしまった。


……好きな方に可愛く見られたいと思うのは悪いことなのかしら?




手櫛でうねる髪を梳(くしけず)り、身だしなみを整える。


「姫さまったら、まだ一刻も先ですよ」


丁寧に畳まれた私の袿を持ち出してきた浮草が、くすくすと笑いながらそれを傍らに置いた。
何が一刻先なのか、はあえて言わず私をからかう浮草。

次いで、ささらが私の前まで飾り箱を持ってきて、漆で塗られた蓋を開ける。

私のお気に入りの扇が入った箱。

二、三本持ち上げて今日はどれにしようかと見比べた。


この薄紅の扇は椿の柄。
こっちは薔薇(そうび)が描かれている少し高価なもの。
そしてこれがー……。

一つの衵扇が目に入り、私の手は止まってしまう。


「どうされました?姫さま」


ささらが私の顔を覗きこんできたけれど、目が衵扇から離せなかった。



未だに薫る、かの宮さまの香の匂い。
それが鼻孔をくすぐったから。




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