クラスメートの跡部くんから、ちょっとボロボロというかクタクタというか、糸がほつれてぐちゃぐちゃ……うん、何ていっていいのか。 とりあえずは捨て時?っぽいリストバンド2つを預かった。 いつもビシっと身綺麗にしていて、こんなふうにボロボロの私物は見たことがなかったので、物凄く意外。 案外物持ちがいいんだね〜って、大事なものなのかな? ナニ様オレ様な跡部くんとは中学一年の頃からのお付き合いなので、かれこれクラスメート暦も4年以上にのぼる。 何の縁なのか毎年4月に新クラスで対面するたびに『またか…』とひっそりため息つく私を見て、チッと舌打ちとともに秀麗な眉を潜めて『お前がため息つくんじゃねぇ!俺様とまた一年一緒なんだ、光栄だろ?アーン』なんてアホなこと言うので、さらなるため息をつくのは言うまでもない。 (ちなみに他にも数人、私と同じように中1からずっとクラスメートの面々も数人いて、その誰もが4月、派手な登場で新教室に入ってくる跡部くんをみてため息をついている) 幼稚舎から氷帝に通う身としては、中等部入学式の壇上で挨拶する跡部くんを見て、とんでもない子が入ってきたものだと目が点になった。 最初は男女問わずポカンとしてたのだけど、すぐさま女の子たちは『きゃー!跡部様〜!!』となって、男の子たちは『けっ…』てなったり、遠巻きで眺めたり、と様々。 私を含め一部の女子は遠巻きで眺めるタイプで、アイドルというよりも大勢に囲まれるパンダを遠くから見ている気分? 同じクラスになって、みんなの注目の的だったんだけど、徐々に『このひと、面白い人なんだな』とわかった。 同時にとても『ザンネンな人』でもあるけど。 かっこよくてお金持ち、スポーツ万能で頭もいい。 何拍子も揃っている恵まれすぎた人は、生徒会長とテニス部部長という人を率いる立場にも自ら立候補していた。 率いているのか正直微妙で、テニス部はわかんないけど生徒会なんて周りがフォロー大変だろうな〜って。 ただ、企画と実行力だけは群を抜いて凄いし、人を惹きつけて引っ張る吸引力?は当代随一ってくらい、カリスマ性に溢れている……のは認めよう。 ザンネンな人だけど。いろいろと。 ほら……性格が、さ。 何というか…… 自分第一で自分がルール、唯我独尊、マイウェイな人でしょ? 何でもできちゃう人だから、私たち凡人が自分と同じように出来ないことに関して、『なんでこんなことも出来ねえんだ』と最初はよく言っていた。 本人としては純粋な疑問だったみたいで、それで周りを敵に回すこともあったのだけど、結局は『跡部くん』なので周りは敵にすらなれなかった。 だんだんとテニス部のチームメートたちに、その難アリな性格の改善? 『人の気持ちを察する、図る』ということを教えてもらったみたいで、高慢チキな坊ちゃんは徐々に変わっていって、今では不器用ないじられ坊ちゃんと言えなくも無い。 私たちとは育った環境も周りも何もかも違うから、跡部くんにとっては『同学年の日本のクラスメートたち』とのコミュニケーションのとり方がわからなかったんだねーってわかるようになったら、跡部くんの物言いや尊大な自信も鼻につくことが無くなったみたい。 それに、何だかんだで物凄く面倒見がいいじゃない? イベントごとの熱意もハンパじゃないし、人を巻き込むところや天性のエンターテイナーなところ?も、何もかもが規格外。 『けっ!』となっていた男の子たちも、今では跡部くんのファンだったりする。 だいたいが『跡部さん!跡部さん!』か、『しょうがねぇな〜跡部は』のどちらかが多いかな? 今のクラスは後者の『しょうがねぇな〜』ってタイプの子が多くて、…まぁ、半分以上が中等部で跡部くんと同じクラスになったことのある人たちばかりだからかもしれないけど。 こう、絶滅危惧種を見守る人たち、みたいな? このクラスは、うまいこと跡部くんをあしらうタイプの人が男女ともに多いように思える。 テストの総合成績は跡部くんがトップなんだけど、科目別では他の人が首位をとったりするんだよね。 跡部くんも普段の授業では真剣に聞いていて、わからないところは素直に周りに聞いたりしてくるんだ。 まぁ、聞き方が………アレだけど。 『おい。ここはどうしてこうなるのかわかりやすく説明してみろ』 …それが教わる側の態度なの? 私の隣の席の数学ナンバー1の男子は呆れつつも、それでも彼も跡部くんと中学1年からずっと腐れ縁のクラスメートなので、取り扱いは重々承知しているらしく。 丁寧に教えてあげている姿が試験前の定例風景だったりする。 どんなことでも自分に『出来ない』のは許せない、完璧主義者なためか、そこは手を抜いてもいいんじゃない?と誰もが思うところも、負けたくないみたい。 家のメイドさんにちゃちゃっと手伝ってもらえばいいのに、家庭科の裁縫もキチっとちゃんと手作りして提出するし、 真面目にちゃんと取り組むところは感心だけどね! (手芸クラブの私に教えを請うやる気はともかく、『おい、ここの縫い方を教えろ。何でほつれるんだ。アーン?』はいただけないけど) ちなみに中等部1年の家庭科授業で最初に作ったクッションは、テニス部部室のソファに飾られているらしい。 高そうなソファにちょこんと置かれたファンシーなクッションという図がちょっと面白いところだけど、寝太郎で有名なテニス部の慈郎くんがよくそのクッションを抱いてソファで寝ていたみたいで、最初はみんな慈郎くんの私物だと思ってたんだって。 その時の課題のクッションは、裏に自分の名前を刺繍するものだったので、当然そのクッションの裏にも『ATOBE KEIGO』と入ってたんだけどね。 次の年は『HIYOSHI WAKASHI』という刺繍入りクッションも置かれるようになったようで、クッション2つ抱えて寝こける慈郎くんの画像が一時期氷帝生の間でまわった。 (私は岳人くんからまわってきた) さすがに裏の刺繍部分は見えなかったけど、家庭科授業を経た私たちはそのクッションが既製品ではなく手作りのものだとすぐにわかった。 跡部くん作のものは当時のクラスメートは皆知っていたけど、何ゆえもう一個写っているのか……慈郎くん作?との疑問は、たまたま手元を覗いてきて携帯画面を見た跡部くんが『そっちは後輩の日吉が作ったものだ。まぁ、俺様のクッションにはかなわねぇがな。ハーハッハ!』と高笑いしながら教えてくれた。 何をどう敵う、敵わないというの…まったく。 中等部卒業とともにそのクッションがどうなったのか不明で、行方も追ってはいないんだけどね。 それとも高等部のテニス部部室にクッションも引越ししたのかな? 慈郎くんの安眠マクラらしく、手入れも彼がやっていて定期的にカバーを自宅に持ち帰りキレイにしてくると言っていたので、慈郎くんがそのまま高等部に持ち込んでいるのかもしれない。 (日吉くんのクッションも一緒に、なのかな?) 氷帝に入るまでおそらくボタンひとつつけたこと無かっただろう生粋のお坊ちゃんの跡部くんが、針と糸もってちまちまと縫う姿は非常にレアなシーンだけど、何に対しても一生懸命な姿勢は好感が持てて、周りのクラスメートとの垣根が一つ無くなった切欠と言えるかもしれない。 アレでちゃんと日直や当番もこなすしね。 そして、レディファーストが徹底されてはいるんだけど、手抜きは許さない性格っぽいので、やることやらない人には女子に対しても厳しい。 基本的には『やる気無いヤツに何言っても無駄だ。放っておけ』と言ってるけど、一年をともにするクラスメートに対しては少し態度が違う。 あーだこーだ言いながらも見捨てないし、見てあげてるし、時にはマンツーマンで対峙して……と、氷帝のカリスマ自らクラスメートわけ隔てなく接するものだから、イベントに対するうちのクラスの団結力といったら凄いものがある。 テストも然り。 先生がこっそり、『跡部のクラスは例年、成績がグンとあがるんだよなぁ』とこぼしていた。どうやら新学期の4月と、最後の3月の一斉考査でクラスの平均点が断然違うみたい。 確かに跡部くんの『試験なんて出来て当然だろ。授業で教わるところが出るんだ』のセリフは正論としかいいようがないし 『俺様のクラスが同学年全クラスでトップなのは当然だろ、なぁ樺地』 『ウス』 いったいいつどのタイミングで樺地くんを教室に呼んだんだ、と誰もが心の中で思ったところだったけれど、試験期間前に決まって吐くセリフに、クラスメートは何かしら鼓舞されるらしく、皆みっちり勉強して試験に臨む。 中には私を含め、密かに跡部くんの成績を抜いてやろうと目論む生徒も数人いる。 目標は総合点で抜くことなんだけど、あの人って基本的にオールマイティだからどの教科も強いんだよね。 数学の彼みたいに早々と見切りをつけて、何か一教科でも首位に立つ!と割り切れれば科目別トップも目指せるんだろうけど。 (勉強では敵わないけど、美術や家庭科、音楽、とそれ以外の教科なら勝てるんだけどなぁ) こう、手先の器用さなら勝てる、というか。 まぁ、あっちは別にライバル心なんて持ってないかもしれないけど……あ、そんなことないか。 中等部の頃、家庭科の洋裁の自由課題でゴテゴテのアンティーク調ドール服を提出して一番の評価を貰った。 一応手芸部だし、この手のモノは自信のある得意分野なので、ついつい凝ったものを作ってしまったら、先生の覚えめでたく皆からも口々に褒められていい気分だったのは否めない。 ただ、当時クラスメートだった慈郎くんが目をキラキラさせて普通の人形の洋服も作れるか聞いてきたので、あまり考えずに『たいてい作れるよ〜たぶん』なんて適当に返したら、次の日カップラーメンくらいの大きさのヒツジのぬいぐるみを持ってきて、それの洋服を作ってくれと頼まれた。 中学2年生の男の子が持つにはずいぶん可愛らしいぬいぐるみだな〜と思ったけれど、慈郎くんなら違和感無いというか。 とても似合ってました。 後から聞いたら、慈郎くんの妹の誕生日プレゼントとして買ったぬいぐるみだけど、洋服着せたらもっと可愛くなるに違いない、でも既製品のぬいぐるみの洋服なんて売ってないし自分じゃ作れない、どうしよう。 …と思っていたところに、ピッタリな『洋裁のうまいクラスメート』の登場、ってわけ。 慈郎くんのデザイン画(というからくがき?)を元におでかけ用と自宅用の2種類作ってあげたら、満面の笑顔で何度もお礼を言ってくれた。 正直言うと、まんまるなヒツジのぬいぐるみに洋服着せたら、ちょっとシュール……う〜ん、似合ってるのかどうなのか。 微妙なラインだったけど、慈郎くんは喜んでるからいっか、と思うことにした。 ぬいぐるみ持って、笑顔ではしゃいでる姿が可愛かったから、それで工賃としては十分!なんて思ってたら、何故か後日跡部くんちにお呼ばれして、美味しいケーキと紅茶をご馳走になりました。 『ジローが世話になったな』 …アナタ、慈郎くんの保護者か何かなの? 色々と疑問だったけど、まぁ『跡部くん』だしね。 テニス部の保護者ってことね、と納得することにしてそれ以上は突っ込まなかった。 すんごく高そうな生地も何点か貰ったので、ありがたく手芸部で使わせていただくことにして。 (慈郎くんのぬいぐるみは、部活であまった切れ端を縫い合わせて作ったので材料費なんて正直かかってないんだけど、なぜか跡部くんから『手間賃だ!』って、生地でお支払いされたんだよね) その後、体育祭では衣装担当に任命され、応援合戦の衣装作成に携わったりもした。 (さすがに手作りは無理なので見本を1着つくって後は指示を飛ばす感じだったけど。 ちなみにマスコットキャラをつとめた慈郎くんの衣装は一人だけちょっとデザインが違ったので、それだけは私が作りました) とまぁ、今までを振り返りながらも跡部くんという人を考えてみた。 スーパーオールマイティな俺様だけど世話好きで面倒見がよくて、いい意味でもちょっとアレな意味でも、とりあえず我らが氷帝の顔? そして、テニス部の保護者? というか慈郎くんの保護者? 慈郎が云々、慈郎が云々、ってしょっちゅう言ってるし。この前なんて、熱心に携帯みてるな〜と思って覗き込んだら、慈郎くんの写メだったしさ。 『のぞくんじゃねぇ!』なんていわれたけど、あっちだって携帯画面のぞいてくるからおあいこでしょ。 なに?恋する乙女なの? 突っ込んだら頭バシっと叩かれた。 よくよくみたら慈郎くんだけじゃなくて、彼の妹もいた。 聞けば船橋のララ●ートのイベントにふなっ●ーが来るからと遊びにいく芥川兄妹についていったんだって。 人生初のゆるキャラが、あんなに激しく動いてジャンプしてトーク繰り広げ、喝采を浴びているところに衝撃を受けたみたい。 ふなっ●ーを囲んで、慈郎くんと妹が一枚の写真におさまっていた。 跡部くんが一緒に写っているものが無かったけど、後で慈郎くんに尋ねたらバッチリ撮っていたので、画像を送ってもらってゲットしました! ふなっ●ーと跡部くんのツーショット。 いや〜これは面白いわ〜。 氷帝ジャーナルに素材提供しようとしたら、跡部くんに全力で阻止されて、画像消されそうになったので断念。。。 卒業アルバムに紛れ込ませられないかな〜? (ちなみに跡部くんの中でゆるキャラ=ふなっ●ー、という図式が成り立ってしまったようで、他のゆるキャラを見て何で喋らないのか不思議に思っているみたい。うちのクラスメートは面白がっているからか、誰も跡部くんの疑問には答えないけど) さて、問題はこのリストバンドね? 黒で、ロゴが……ウィルソン? どこかで引っ掛けちゃったのかな。ほつれてるところがグチャグチャしてて……うん、これはどうにかしようとして、傷口広げちゃったパターンかも。 まぁ穴やほつれは何とかなるとしても、全体的にくたくた? 使い込まれているので、純粋に買い替え時のような気もするけど。 でも、『直してくれ』と言ってくるくらいなので、捨てたくない大事なものなんだろうね。 とりあえず薄汚れているところを何とかして、あとは修繕に取り掛かるとしましょうか。 あ。 刺繍でも入れてみようかな?イニシャルとか。こう、ちょっとでもこの穴を……うん、聞いてみよう。 携帯を取り出して跡部くんへメッセージを送信した直後、そういえば相手は部活中だから気づかないと思ってたけど、すぐに返事がきた。 …練習しなさい、練習を。 ―刺繍いれてもいい?あいちゃったところごまかせるかも。 『基本的には任せるが、何の刺繍いれるんだ?』 ―名前とか?イニシャル?A.K。それともひらがなで『あとべ』にする? 『ヤメロ。俺のじゃないから、名前はいれるなよ』 ―誰のなの? 『ジロー』 ―じゃあ慈郎くんのイニシャルにする? 『ジローのだが、元はジローのじゃねぇ』 ―意味がよくわかんないんだけど。 『ジローも貰いモンだ』 ―誰からもらったの?その人のイニシャルにすればいい? 『イニシャルはいいから』 そのまま慈郎くんにもメッセージを送って、刺繍のこと聞いてみたら、こっちもすぐさま返信がきた。 …ちょっと、テニス部。活動してないの? (コートから氷帝コール聞こえるのに) 慈郎くんからは、跡部くんのイニシャルでも何でもオッケーと返事がきた。 ものすんごく大事なリストバンドだけどボロボロなので、テニスで使うには無理だとしても、見た目にキレイになってくれれば、とのこと。 う〜ん、そうだなぁ。 氷帝のロゴにしちゃおっかな? よし、そうしよう。 青と水色の糸、どっちがいいかな〜 じっと見ればわかるような、目立たずさりげない感じがいいかな? これくらいならすぐに出来るしね。 ひとまず片方のリストバンドで、一番ダメージ受けてるっぽい穴のあいたところを修復。 これは氷帝の校章で刺繍することにして。 もう片方も氷帝でそろえようかな〜。 でも、誰かからのもらい物って言ってた。 誰から貰ったのかなぁ? 参考までに慈郎くんに聞いてみた。 …ふんふん、なるほど。 慈郎くんが中学の頃からずっと憧れている選手なんだね。 その人みたいになりたい、と。 ほほう。 ちなみにどこの誰なの? ……ふんふん、なるほど。 ちょいとググって、慈郎くん憧れの人が通う高校をチェックしてみると、校章が案外ポップなデザインで、可愛いかも? よし、もう片方はこれにしてみるか。 氷帝ロゴよりささっと終わりそうだし。 片方のリストバンドに氷帝ロゴ、もう片方は他校の校章を刺繍してみた。 (もちろんちゃんと慈郎くんに許可はとりました!) うん、割とキレイになったかも! くたびれ感は否めないけど、ボロッボロ感は何とかごまかせそう。 何よりもほつれにほつれまくった部分と穴が、うまいこと刺繍でカバーされている。 後は最後の仕上げを手芸部の『洗濯のプロ』な先生に聞いてみるか。 ちょっとでもくたびれ感が取れればいいかな〜って。 よぉし、完成! 翌日、教室に入るなり私のところへ直行してきた跡部くんに、修繕完了したリストバンドを2つ渡した。 刺繍は慈郎くん了承のうえコレにしました、と告げるとすぐさま刺繍部分のチェックに入った。 氷帝のロゴには満足そうに頷いていたけど、もう片方のロゴをみて眉を寄せて『チッ』なる舌打ち……ん?どういうこと? 『…オイ、なんだこのロゴは。なんで両方、氷帝にしねぇんだ』 「いいじゃない。だって慈郎くん憧れの選手なんでしょ?片方が慈郎くんで、もう片方がその子の学校ってことで」 『アーン?ジローはこいつを超えようとしてるんだぜ?なのに―』 「でも、ちゃんと慈郎くんに聞いたよ?『片方ずつなんて、まじまじうれしー!』だって」 『…あのヤロウ』 ぶつくさ言っていたけど、氷帝ロゴのほうが大きめの刺繍だったのでよしとしてもらえた。 (ちょうど作業中に、窓から氷帝コールが聞こえたので、ついつい。 だって『勝つのは氷帝』なんでしょ? たとえ刺繍とはいえ、氷帝のほうが目立たないとね!ということで) 跡部くんから昼休みにリストバンドを受け取った慈郎くんが放課後教室にやってきて、いつかのぬいぐるみのように盛大にお礼を言ってくれた。 相変わらずのキラキラした両目がまぶしく、その笑顔は教室中を照らし、みんな癒されたみたい。 憧れの選手のことをあれこれ語ってくる慈郎くんに、『まるいくん?のこと、大好きなんだね〜』と告げると、大きく頷いて『ず〜っと憧れなんだ〜!まじまじ、すっげぇし。今度一緒に立海いこ〜?ぜってぇ惚れるC!』だって。 ―ええ〜、惚れていいの? 突っ込んでみると、あたふたしながらリストバンドぎゅ〜っと握って、困った顔をした。 心なしか頬がピンクになってるような……可愛いな、ヲイ。 なになに、恋する乙女なの? ボソっと呟いたら、隣にいた跡部くんにボカっと頭を叩かれた。 ―慈郎と立海見学にいってもいいが……いいか、立海の練習が終わる前に慈郎連れて都内に戻れ。 丸井が着替え終わって出てくる前にだ。わかったか? …跡部くん。一体何の心配をしてるというの? そんなに『まるいくん』とやらと慈郎くんを会わせたくないのかな?でも、立海大高校?までいくのはOKなのね。 よくわかんない。 …というか、行きませんから! (終わり) >>目次 |