丸井ブン太Happy BirthDay!2013





「丸井先輩〜、コップ足んねぇっス」

「シンクの上の棚から持ってけ」

「おいブン太。鍋、ふいてるぞ?」

「蓋とって弱火にしろぃ」

「あ、ジャッカル先輩。ついでにこのコップも持ってってください」

「おう、よこしな」

「丸井くん。野菜、切り終えましたが」

「そこの青い皿に盛り付けてくれ。こっちのソース、入れるから」

「わかりました。バーニャカウダーですか?」

「おう。…そろそろいいな。
比呂士、そこのちっちゃい深皿よこして」

「わたしが入れましょう」

「じゃ、これ頼むな。熱いから注意しろよ」

「これにて完成。さ、仁王くん。持っていきたまえ」

「こっちの棒々鶏も持ってってええんか」

「冷蔵庫に胡麻タレ入れたままでしたね。丸井くん、バンバンジーにかけちゃっていいでしょうか」

「おっけー。そろそろ時間だしな」

「胡麻ダレも自家製か。さすがだの」

「丸井。オーブンのも焼きあがったみたいだよ?」

「どれどれ……お、いい色だな。よし」

「出そうか?」

「だいじょーぶ。かなり熱いから危ねぇし、慣れてっから俺やるよ。
あー、じゃ、幸村くん、そこスペースあけてくんねぇ?」

「このくらいでいいかい?」

「十分!」

「うわ〜すっげぇ美味そう。これ、何スか?」

「パエリアですね」

「柳生先輩、パエリアって何スか?」

「お米と野菜、魚介、肉等を炊き込んだ、スペインの米料理ですよ」

「へぇ〜。すんげぇ豪華ッスね〜」

「ふふ。地方によって具材も味も違うけどね」

「幸村部長、スペイン行ったことあるんスか?」

「前に家族旅行でね。マヨルカ島の海鮮パエリアが美味しかったよ」

「これと同じような感じッスか?」

「そうだな。丸井のも海鮮パエリアだね。スキャンピもはいってる」

「すきゃんぴ?」

「この海老のことだよ」

「幸村。俺も何か手伝ー」

「真田は席についてていいよ」

「いや、しかし」

「ひとまずキッチンは人手足りてるから、蓮二に聞いてみたらどうだい?」

「…わかった」

「ブン太。圧力鍋開けていいか?」

「油はねるから気をつけろい」

「桑原くん。バットです」

「サンキュ。おいブン太、とりあえずここにあげとくぞ」

「おう。油きったら皿に入れろい」

「ほぉ〜フライドチキンか。よぉ作れるモンじゃの〜」

「この前テレビでやってたからな。お試しだ」

「あ、俺も見たッス。ケンタッキーでしょ」

「ケンタッキーでバーレル買わず、作るところが丸井くんですね」

「美味かったらジロ君の誕生日に作るリストに入れるから、しっかり味みろよ、ジャッカル」

「俺は毒見係りかよ」

「味見れるだけ得だろい」

「…ったく。もういいか?これ」

「おう。バッチリだ。皿にうつしてもってけ」

「桑原。俺が持っていこう」

「柳?テーブルセッティングはもういいのか?」

「弦一郎が手伝いたさそうだったんでな」

「あぁ、真田と交代したのか」

「いや、精市が『座ってろ』と言ったんでな。弦一郎は大人しく座っている。
かわりに精市が残りの皿を並べているが」

「そ、そうか」

「丸井先輩〜、うどんどーするんスか?ゆでる?」

「赤也。うどんはシメじゃき」

「ばぁか、今ゆでたらくっつくだろーが。あとでやっから、置いとけ」

「そろそろ終わりそうですね。洗い物の残りをー」

「ストップ比呂士。
後でまとめて食洗機かけるから、とりあえずリビング行って」

「わかりました。仁王くん、行きますよ」

「飲みモンをー赤也、冷蔵庫オープンぜよ」

「ハイッス!ペプシと、ウーロン茶と、カルピスウォーター。緑茶も出します?」

「とりあえず出しときんしゃい」

「らじゃーッス」







【 丸井くん、おめでとう!〜立海メンツで誕生会を開くの会〜】







がやがやどたどた。

キッチンとリビングで、男子学生8人があちこち行ったり来たり。


ようやく落ち着いたのか、家主(この場合、住人という意味だが)の一声で、全員テーブルに集い、着座してそれぞれコップを持った。
炭酸飲料、お茶、ジュース…とその中身はバラバラだが、乾杯の声は統一して、この一言。





「「「「「「「 おめでとう 」」」」」」」



「丸井先輩、誕生日おめでとーございます!」

「おう!いっぱい食えよ」

「丸井くん。おめでとうございます」

「さんきゅ。比呂士も、色々手伝ってくれてありがとな」


柳生の前には、彼がセンスよく盛り付け、丸井特製のソースが添えられている春野菜のバーニャカウダー。
その隣には、湯気をたててぐつぐついっている大きな鍋が、食欲をそそる香りを放っている。


「ブン太。ハッピーバースデー。ということで鍋、もういいかの」

「おう、食え」

「カレー鍋か。食べたことないけど…うまそうだな」

「カレーで鍋なんだぜ?ウマいに決まってンだろ。とりあえずお前は先にフライドチキンを味見しとけ」

「だから俺は毒見係りかよ」

「ジロ君に食わせる前に、俺らが食う前に、とりあえずお前だろい」

「ったく。じゃ、いただくぜ。…っと、ブン太、おめでとう」

「おう!」


肉団子、春キャベツ、新たまねぎ、菜の花、きのこ…
こんもりとカレー鍋をよそう仁王の隣は、揚げたてのフライドチキンを取り皿に移し、丸井特製スパイスを皿の脇に少しのせたジャッカル。


「丸井、おめでとう。
でも、なんだか悪いね。丸井の誕生日なのに、ほとんど用意してもらっちゃって」

「幸村くんもいっぱい手伝ってくれたし。あんがとな」

「俺からも祝辞を述べよう。
丸井、誕生日おめでとう」

「さんきゅ。つーか、全体的に濃い味だけど、大丈夫かよ」

「ああ。確かにベースは濃い目だが、素材の味がしっかり出ている。うまいな」

「そりゃよかった」


優雅な手つきでバンバンジーサラダをわけるのは、料理作り、片付け、セット…と、色々と細々した手伝いをしてくれた幸村。
そして、本日のテーブルセッティング担当は、旬のホタルイカを酢味噌ではなく醤油でいただく柳蓮二。
(素材が命のホタルイカである)



「丸井」

「おう」

「おめでとう」

「さんきゅ」

「すまん…俺も、何か手伝おうとしたんだがー」

「幸村くんに言われてただろい。座ってていいって」

「い、いや、そうだが」

「人手は十分だったからな」

「そうか…」






本日4月20日・土曜日
わいわい囲んでいる食卓の中心、こちらの丸井宅の住人でもある長男、ブン太の誕生日である。


毎年、彼の誕生日はというと、小さい弟がいるためか外食よりも、家で母親の手料理が定番だった。
が、今年は。


まず、父が仕事の都合で出張に出ており、帰宅が明日になる。

さらに、小さい弟はバッドタイミングでお泊り保育が重なった。

上の弟は、小学校でこれまた泊まりでの長野星空鑑賞会。
何故に夏ではなく、この時期なのか謎なところだが、親と一緒に行く〜と銘打たれた土日の1泊2日旅程。

父親は出張のため、母がついていくことになり、図らずも長男一人で留守番となったのだ。


もう高校生だし、一人で一晩くらい問題ない!と母につげ、『兄ちゃんといたい〜』とごねる弟へは、星空鑑賞会を楽しんでくるよう言い聞かせた。
明日は父も戻ってくるので、夜に家族で誕生日を祝おうということになり、本来ならば一人で過ごすはずだった。


ただ、学校帰りのゲームセンターで、ジャッカル、切原といつものように遊んでいたとき、買い物帰りの母親とバッタリ会ってしまって。
『ジャッカルくん、よかったら土曜日、一緒に遊んでやって』
の一言で、誕生日留守番がバレた。

そこからあれよあれよと皆に伝わり、いつのまにか丸井宅でバースデーパーティとなり…

てっきりどこかで夕飯一緒に食べて、バイバイかと思っていたら。




『この年になって、誕生会とか、マジかよ』




最初は冗談半分だった丸井だが、部活のチームメイトたちはどんどんと割り振りを決めていって、
料理材料買出し担当、飲み物担当…と、立海テニス部の頭脳・達人によって次々と本格的になっていった。



それならば、とことんやろうじゃねーか!



自分の誕生日に自分が腕をふるうのもなんだかな〜と一瞬思ったが、どうせなら美味いものを食べたい。
しかも、材料費はチームメイト7人が出してくれるという(半分以上は両親の援助だが)


それならば、作ってみたかったフライドチキン始め、食いたいモンをつくってやる!


意気込みあらたに、童心にかえって誕生日を楽しむことにした。





「そういえば芥川くん、今日は来ないのですか?」

「ジロくん?」



もしゃもしゃとカレー鍋のキャベツを租借していたら、思い出したかのように言われたのは現在絶賛おつきあい中の、恋人のことで。



「氷帝って第三土曜日、練習オフッスよね」

「練習無い日に来ないなんて、珍しいんじゃなか?」

「今夜は新国立劇場貸切でのオペラ鑑賞会だから、時間的に難しいのだろう」

「終わンの9時過ぎだと、さすがに来いとは言えない時間だろい。って、よく知ってるな」


さっすが柳、なんて両手をポンと打ったら、すかさず『氷帝名物の貸切鑑賞会は有名』と切り替えされた。



「ああ、確かに。春と秋だったっけ?新国立を貸しきるんだから、さすがやることが派手だな」

「幸村くんもオペラとか見んのか?」

「たまにね」

「ジロ君は寝るんだぜ…でも、全員参加だから抜けらんねーんだと」


生徒会長効果なのか、かなりいい席が用意されているらしいのに、毎度毎度始まって数分で寝てしまうらしく。
両隣の幼馴染が、イビキが出そうになった瞬間、鼻つまんできたり、頭叩いてきたりと熟睡をふせいでくれるらしい。

そんな寝太郎に、なんとかオペラを楽しんで欲しいと思っているらしく…

生徒会長がチョイスするオペラ鑑賞会の演目は、回を追うごとにわかりやすい、優しい演目になってきている。


…というのは一部の氷帝生徒の間でのみ知られている事実である。


理由はともかく、およそ役に立つのかはさておき。
立海の参謀にとっては、他校のオペラ鑑賞会の演目も把握済みだ。


「だが、今回は『セビリアの理髪師』だろう?」

「わかりやすい演目だね。コメディで初心者には入りやすい」

「聞いたことある音楽とか、コメディとか関係ねーんだよ。
ジロ君、暗いとこだとすぐ寝ちまうし…大音量でも関係無しだし」

「もったいないね。せっかくの新国立」

「まぁ、興味の無いものが見たら、そんなものだろうな」



跡部の苦労もご愁傷様。
と立海3トップの2名は、その後もオペラ・クラシック談義に花を咲かせている。


(3トップ残りの1名はジャッカルと同じく、初めて食べるカレー鍋に感動しているらしい)











いっぱい食べて、皆に囲まれて。
部活のこと、授業のこと、テレビのこと。

尽きない話題に、次々と気持ちいくらいキレイに空になっていく皿。



偶然が重なって1人留守番の誕生日に、大好きな君がこれないのは残念で、少し寂しいけど。

それを埋めるように、皆が集まってくれた。




こんな誕生日も、まぁ、たまにはいいかな?





男だけで集まって、自分たちで料理つくって準備して、健全な『誕生会』するのも、最後かもしれないし。




皆、ありがとう!













丸井ブン太、17歳の春でした。






(終わり)

>>目次

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17歳の一幕、ということにしてみます。赤也も高校生にするため。
当初予定してた誕生日話とはぜんぜん違うモノになってしまったのですが……

当初予定してたものを書かねば!
この『誕生会のあと』ということで。>だってここはジロちゃんサイト…


ちなみに、丸井誕生会のメニューですが。
・春野菜と肉だんごのカレー鍋
・魚介もりだくさんパエリア
・バンバンジーサラダ
・春野菜のバーニャカウダー
・フライドチキン
・ホタルイカ(富山産)酢味噌和え、ボイル、沖漬け…などなど。
あとは適当に、ジャッカルが店から持ってきた餃子を仁王くんが意外と器用に焼き上げたり。
あまった餃子で柳生くんが水餃子(中華スープ)作ったり。
弦一郎が買ってきたケーキが5号だったため、『小せぇ!せめて7号だろい!』と言われたらしい。



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