跡部景吾 -俺様とジローの5月5日の夜

*会話文




「…あん?」

『オッレン〜ジ♪ ゆうひ〜にっ、か〜んじるっ、このむな〜さーわーぎっ』

「俺の部屋で…誰だ?」

『やわらか〜な、かみをっ、ゆらして と〜おざかる〜きみの〜えがお♪』

「この声…アイツか。いねぇと思ったら、いつの間にここに来てんだ」

『ウェイティンフォーヨ〜ラブ、あえなく〜ても、このせ〜かーいの、ど〜こーかで〜わらってる』

「おい、ジロー!」

『ウェイティンフォ〜ユア〜ラー おわりじゃ〜ない』

「(聞こえねぇか。…まあいい、歌もラストに入ったから、もうあがるな)」

『かが〜やく、きみのいた〜みちをぉ〜♪』










「ふぃ〜、さっぱりした〜」

「おい」

「ほぇ?アトベ〜?」

「ホケホケしてんじゃねぇ」

「おかえり〜」

「俺様のバスローブ着てンじゃねぇよ」

「う?お風呂場にあったんだC」

「当たり前だ。ここをどこだと思ってやがる」

「アトベの部屋〜」

「なんでここにいるんだ、アーン?」

「お風呂入りたかったから」

「客室にあるだろうが」

「誰か入ってたし、皆で入れる広いお風呂も、混んでた〜」

「だからって俺の部屋で入ってんじゃねぇ」

「ミカエルさんがいれてくれたんだもん」

「あんだと?」

「坊ちゃまのお部屋にご用意しますね、て言ってくれたしぃ」

「ミカエルがそんなこと言うわけがー」

「この前きたとき、アトベが『ジローは入ってもいい』て言ってくれたじゃん」

「……あ。」

「だから、ミカエルさんもここ、開けてくれたんだよ?」








『ジローさま、景吾坊ちゃまのお風呂、ご用意致しましょうか?』

『え、いいの〜?』

『はい。ジローさまだけは特別に許可が出ております』

『やっりぃ〜。この前泊まったとき、アトベの部屋のお風呂、ちょー楽しかったんだよね〜』

『景吾坊ちゃまもジローさまにはお許しになられておられます』

『そういえば、「いつでもここの風呂に入れ、ハハハハハ!」て言ってた〜』

『えぇ。ですから、ご用意しましょうか?』

『じゃそうする!お願いしま〜す』







「一言、言ってから行け」

「あれ〜?言ってなかったっけ?」

「聞いてねぇ。……探したじゃねぇか」

「ゴミンネ」

「…で、どうだ」

「う?」

「いい湯だったか?」

「!うん。やっぱりアトベの風呂、ちょー楽しい〜。金キラ〜蛇口もちょーかっけ〜し」

「ふっ…当たり前だ」

「アトベも入る?」

「あぁ」

「バスローブ、つかう?」

「脱ぐんじゃねぇよ」

「でも、お風呂場にこれしか無かったよ?」

「俺の部屋だ。いくらでもある。いいからお前はそれ着てろ」

「は〜い」

「いいか、俺様があがるまでじっとしてろよ」

「ノド乾いたから、皆のとこ行く〜。あそこ、まだ飲み物あるしー」

「ベッドサイドのコールでメイドにつながる。何でも好きなの持ってこさせろ」

「いいの〜?」

「とりあえずおとなしく座ってろ」

「わかった〜」

「寝るなら髪乾かしてからにしろよ」

「起きてるC」

「…どうだかな」

「行ってらっしゃ〜い」

「あぁ」










『もしもし〜あ、ミカエルさん?』

『はい。お飲み物ですね』

『うん!』

『景吾坊ちゃまはご入浴中でしょうか?』

『いま入った〜』

『では、坊ちゃまのお飲み物もご用意させていただきましょう』

『お願いしま〜す』

『ジローさまはいかがなさいますか?』

『う〜んと、そうだな〜』

『オレンジやアップル等のフレッシュジュースか、ミルクで割るバナナジュース、ミックスジュースになさいますか?
それとも、お水やお茶、スポーツドリンク、炭酸がよろしいですか?』

『あ、おれバナナジュースがいい!』

『かしこまりました』













「あれ?もうあがったの?早かったね〜」

「あん?」

「いま、ちょうど飲み物もってきてくれたところなんだよ」

「ちゃんと俺様のも用意できてるじゃねぇか」

「うん!ていうかメイドさんが持ってきてくれたー」

「ふっ。さすがミカエル。いいタイミングだ」

「はい、アトベの(ノンアルコール)シャンパン」

「…おい、泡だらけじゃねぇか」

「いれんのムツカシイね〜」

「まぁいい」

「泡なくなったらまたいれるよ〜」

「お前は飲みものだけでいいのか?」

「夕飯いっぱい食べたからお腹いっぱい」

「そうか」

「ちょ〜美味しかったC!」

「当然だ」

「ケーキもいっぱい食べた」

「そういや見慣れないケーキが置いてあったな」

「え〜?」

「チョコレートの、中々の味だったが」

「あ、『RIKKAIスペシャル』ね!」

「立海……丸井か?」

「うん!夕方、作ってくれたんだ。よかった。アトベも食べてくれたんだね〜」

「あいつ、中々やるじゃねぇか」

「樺ちゃんもシフォンケーキ作ってくれたんだよ〜」

「今年はシフォンケーキか」

「うん!ふっわふわで、ちょー美味しかった」

「樺地にちゃんと礼したか?」

「したよ〜。今度、一緒にケーキ食べ歩き行く約束したもんね」

「『食べ歩き』だと?」

「うん。アトベが密かに好きな、下町食べ歩き」

「あん?誰がだ」

「この前のB級グルメ食べ歩き、ちょー楽しそうだったじゃん。ああいうの、好きでしょ」

「……嫌いじゃねぇ」

「うしし。素直になったほうがいーよ」

「あんだと?」

「行きたいって言ってくれれば、アトベも連れてってあげる」

「……」

「甘いの食べ歩きだよ」

「デセールなら、困ってねぇ」

「ケーキだけじゃなくて、タイ焼きとか、大判焼きとか、どら焼きとか、最中とか」

「あんこばっかじゃねぇか」

「おせんべいとか、濃厚牛乳ソフトとか、アイスとか。何でもだしぃ」

「甘いのは、そんなに食べねぇよ」

「カルビープラスとか、ぐりこ・やとか、アンテナショップも行くよ〜?」

「カルビープラス、だと…?」

「ポテりこ、食べたいっしょ」

「!じゃがりこのヤツか」

「揚げたてポテトチップスもあるC」

「……」

「丸の内〜銀座あたりで食べ歩き予定なんだよね〜」

「となると、東京駅のお菓子ランド…」

「行きたいっしょ」

「…別に、俺は」

「一緒に行こ?」

「……」

「丸井くんとオレと、樺ちゃんとアトベで!」

「どういうメンバーなんだ、それは」

「丸井くんとオレの食べ歩きに、樺ちゃん誘ったの。んで、アトベも誘ってんの、いま」

「……しょうがねぇな」

「行きたいくせに〜」

「あ〜ん?」

「にひひひひ」

「ニタニタするんじゃねぇ」

「丸井くんに報告しとくね〜」

「………あぁ」







「ジロー」

「うん?」



「Alles Gute zum Geburtstag」

「なに?あれぐーつげぶーつたー?」

「めちゃくちゃな発音だな」

「何語だよ〜わかんないしぃ」

「ドイツ語だ」

「…なんでドイツ語?」






「Χρονιά πολλά」

「う?ほろにゃぽら?」

「なんつー発音だよ」

「なんだよ〜わかんねぇよー。今度は何語?」

「ギリシャ語だ」

「わかるわけねぇじゃん」

「お前、選択でギリシャ語とってただろ」

「覚えてないしぃ」







「Happy Birghday」

「!」

「今度は、わかったか?」

「……うん!」





「しかし、お前が俺様より年上になるとはな」

「えへへ。オレのが半年、お兄ちゃんだC!」

「口の周りに牛乳つけて、何がお兄チャンだ」

「景ちゃん、まだ16歳ですもんね〜」

「景ちゃんはヤメロ」

「ジローお兄さまは17歳ですから」

「しょうがねぇお兄様だな」

「もうじきアトベの身長、追い越す!」

「もうじきって、どれぐらいのスパンでみてンだ?」

「アトベが17になる前!」

「非現実的な夢を見るんじゃねぇ」

「わかんねぇじゃん」

「ほぉ〜、あと半年で、15センチ伸びるのか」

「伸びる!オレ、いま成長期だし」

「あいにく俺様の成長期も、まだ終わってねぇ」

「オレ、樺ちゃんくらい大きくなる予定だから」

「だから、非現実的な夢を見るんじゃねぇよ。とりあえずお前は身近なヤツに目標をおけ」

「誰だよ〜」

「丸井は身長、近いだろーが。あいつをまず目標にでも何でもしたらどうなんだ?」

「丸井くんはたいして身長変わんね〜もん。すぐ追い越すC。あ、でも体重は無理ー」

「お前は軽すぎんだよ」

「丸井くんは重すぎなんだよ〜?アトベと体重変わんね〜し」

「…あいつ、そんなにあんのか」

「オレ、中学より身長も体重も増えたけど、丸井くんとの差が変わってねぇもん。
身長が4センチ、体重が12キロ〜」

「それでケーキバイキング行こうとしてんのか」

「うん」

「立海のウェイト管理はどうなってやがる」

「柳は注意してたけどね〜。パッと見はそんなに太ってないけど、のっかられると重い」

「俺様が直に気合入れてやるぜ」

「うん。甘いもの食い倒れツアーで、根性いれてやって」

「食うのかよ」

「死ぬほど動いてカロリー消費するから、食事はぜったい制限しないんだって」

「根性叩きなおしてやるぜ」

「樺ちゃんも楽しみにしてるから、食べ歩きはぜってぇ行くよ?丸井くんに食べさせる云々は置いといても」

「!…そうか、樺地が」

「色々お店いって、勉強してもらって、美味しいタルト作ってもらうんだC!」

「おい」

「だって、樺ちゃんのタルト、まじまじ美味いんだもん」

「まぁ、そうだな」

「ついでに丸井くんも。食べ歩きの度に、新作メニュー作ってくれるから」

「おまえら、そんなことしてんのか」

「そうだ!アトベん家で作ってもらおっか?」

「丸井にか?」

「と、樺ちゃん!」

「樺地はともかく」

「丸井くんも、ちょープロ級だよ?今日のチョコケーキも、ああいうの好きでしょ」

「…まぁ、うまかったな」

「オレもチョコケーキ好きだけど、アトベはチョコが濃い甘さ控えめのほうが好きじゃん?」

「…それで?」

「丸井くん、ちゃんとカカオ濃いめでビターなケーキにしてくれたんだよ」

「!」

「オレのリクエストだけどさ」

「ジロー…」

「アトベに、お礼もかねて。言うの忘れちゃってたけど、食べてくれてよかった。
…といっても、作ったの丸井くんだけどね」

「……丸井に礼でも言っておくか」

「ちゃんとお礼したよ〜」

「お前のワガママ、聞いてもらったことだしな」

「ぶ〜。丸井くんが作ってくれたんだもん」

「頼んだんだろ?」

「ど〜だったかな〜」

「ったく。まぁいい」









「乾杯しておくか」

「なにに?」

「バーカ。お兄チャンの誕生日だろうが」

「!」

「ほら、グラス持て」

「……シャンパン、つぐからグラスかして」

「ちゃんといれろよ?」

「大丈夫だよ〜」




「って、言ったそばから泡だらけじゃねぇか!」

「あっれぇ?おかしいC」

「いいか、スパークリングをつぐときは、グラスをー」

「とりあえず乾杯する?」

「聞け!」







「17歳、おめでとう」

「…ありがとう」

「今年も、お前にとっていい年でありますように」

「……アトベ、ありがとう」

「あん?」

「毎年、おうちでパーティしてくれて、ありがとね。今年もすっげぇ楽しかった」

「俺様の部員のBirthDayだ。当然だろ?」









5月5日、氷帝テニス部部長、跡部景吾主催、『俺様が祝う部員の誕生パーティ』
初夏の恒例行事は恙無く進み、夜を迎えた。
客室で寝るもの、夜中までゲームしながらレクリエーションルームで寝てしまうもの、自宅へ帰ったもの、各々それぞれに。

主賓の芥川慈郎はというと、主催の部屋で夜遅くまでお話しながら、そのまま彼のベッドを占領し眠りについたそうな。
ちなみにベッドはキングサイズのため、2人で寝ても広々としている。
ど真ん中を占領された部屋の主は、『おい、お兄様。ったく、しょーがねぇな』なんて笑いながら、布団をかけてあげてその隣にもぐりこみ、6日を迎えることになる。







(終わり)

>>目次

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慈郎くん、17歳の誕生日おめでとう!!!>誰が17…
Waiting for your love も大好きです@sing by 芥川慈郎(うえださん)

丸井くんが出てきちゃうところがブンジロサイトゆえん…いやいや、でも。
やっぱり跡部様が好き!というか、跡部たまとジロたんの組み合わせが好きなんだな〜と。
昔、テニスサイトやっているときも、跡+ジロが好きで書いてたな〜と思い出しました。
だって跡部たま、ジロに優しすぎるんだもん。
OVAアノトキノボクラなんて、もう、どうしろと……跡部たまのジロへの甘やかしっぷりに、きゅんきゅんしました。

5月6日担当、赤也のジロ誕話でも5月5日は『俺様パーティ』ですが、設定が同じで赤也のは切ジロにしただけなので、この氷帝会話文はCPではない、友情ものです。
(氷帝で『俺様パーティ』書くはずが、赤也の話を先に書いてしまったため『俺様パーティ』が出てきて、そのあとにこの氷帝会話文に取り掛かったので、新しく別にしようと思ったけど、もう『俺様パーティ』でいいや、という)


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