1/6小春Happy BirthDay!2014



U17選抜合宿。
高校生主体の合宿に将来有望な一部中学生を多数選出し、勝ち組負け組としのぎを削りあって最終的に選ばれる選抜メンバーを目指し日々奮闘。
顔見知り程度の他校生らと朝から晩まで一緒に過ごすの中、気が合い友情を育むもの、テニス以外の趣味で話が盛り上がり連絡先を交換するもの、コイツとは気が合わないと最低限の話しかしないもの、そしてライバル心をよりいっそう育てバチバチと火花散らすもの。

そんな中、非常〜〜〜〜〜〜〜〜に稀なケースではあるだろうが、色恋沙汰に発展するもの。
(注:U17『男子』選抜合宿なのはさておき)

これは、そんな『稀な男子』に片足突っ込んだ者と、たまたま同じ学校のチームメートで、たまたま何度も彼が悩んでいる場面に遭遇し、たまたまそれに反応していたら最終的に頼られるようになってしまった中学三年生の合宿時の出来事を少しのぞいてみたお話です。

まずは、切欠から…



1.204号室前の怪しい人物

『え〜、ムースポッキーが一番でしょ〜?』
『ボリュームが足んねー。やっぱもっとデコってねぇと。クラッシュポッキーだろい』
『ふわふわ感がいいんだよ、ムースポッキーのさ』
『最近見ねぇじゃん、ムースポッキー』
『…そうなんだよねぇ。いつも間に市場から消えちゃった』
『ま、ミディあっから。似たようなモンだろ』
『う〜ん。今のポッキーの中じゃミディが一番だけどさー』

少しドアが開いている204号室から漏れ聞こえてくる中学生二人の会話。
どうやら金髪の氷帝生と赤髪の立海生は、持ち寄ったお菓子を食べながらのお菓子談義を繰り広げているようで、それに入りたいのかどうなのか、廊下で様子を覗いている怪しい人物が一人。


「謙也きゅん、何やっとん?入ればええのに、挙動不審すぎるわ〜」
「…っ!!」


トントンと肩を叩かれ、物凄い勢いで後ろを振り返った『怪しい人物』の正面には、同じ学校からこの選抜合宿に参加しているIQ200のお笑いラブルスの片割れがいた。


「こ、小春…!」
「なぁに中腰で覗いとるん。入らんの?」
「べ、別に、俺は―」
「204号室……丸井きゅんと芥川くん、向日くんの部屋やねぇ」
「そ、そうなんか」
「?三人の誰かに用事あるんちゃうん?」
「あ、いや、その…」
「…何なん?人見知り―ってワケでもあれへんよねぇ。呼んだろか?」
「い、いいい、いやいや」
「……ほんま、何なん?丸井くんでええの?」
「別に丸井に用事なんて」
「ほな向日くん?」
「だから、誰にも用事は―」
「となると、芥川くん??」
「―っ!」


途端に顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせる『怪しい人物』に、はて、氷帝の寝ぼすけと四天宝寺のスピードバカは交流があっただとうかと思い返してみたが、小春の脳裏には氷帝の天才と一緒にいる謙也しか浮かばない。
他の氷帝生ならいざしらず、練習以外では寝ているコトの多い芥川……といえばオフ時に起きているとしてもぼーっと動かず、跡部や向日ら氷帝組、同室の丸井、同じところで休憩していることの多い青学の越前、このあたりがよく世話をやいている場面に出くわすことはあるが、ゆっくりした空気が苦手な謙也とのんびりしている芥川が結びつかない。
けれどもまぁ、氷帝に従兄弟がいる謙也なので、それつながりで交流があるのかもしれない。

しかし。

(何やっとんの……芥川くんに用事ちゃうん?それとも、あの二人に混ざりたいん?)

それなら堂々とノックして204号室に入っていけばいいのに、僅かな隙間から覗くだけなんて怪しいことこのうえない。
それならば。


―トントン

「ちょ、小春!何して―」
「中、入りたいんやろ?呼んだるから、入り」
「い、いい!?あ、あ、アホ、いらんし!」
「何をそんなにどもるん?謙也きゅん、おかしいで。丸井く〜ん、芥川く〜ん、入るで〜!」
「や、やめぇ、小春!」


仲良くしたいけどシャイなのねん、と思うことにして良かれと手助けをしたつもりの小春だったけれど、中から『は〜い』と氷帝生の方の声が聞こえたら、隣のスピードバカが反射的にびくっと肩を揺らし、そのまま走り去っていってしまった。


(……なんや、中に入りたかったんちゃうん?)


廊下に取り残された小春は、とりあえず出てきた彼に挨拶をして、そのままポッキー談義に混ざることにした。
ちなみにイチゴポッキー派だと参戦したところ、途中で『期間限定系が一番や!』とラブルスの片割れがやってきて、結果4人であれこれ言い合いながら大層盛り上がったらしい。





>>朝食会場の挙動不審な男   >>目次


[ 85/116 ]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -