ジャッカルHappy BirthDay!2014



東京の氷帝学園方面へ所用で出かけると話の流れで伝えたら、チームメートのブン太くんからDVDを預かりました。
いわく、

『ジロくんが見たがっていたアニメ』

だそうで。
本当は一緒に見るつもりだったけれど、丸井家は1日からの三連休で家族旅行。対する慈郎くんは連休も特に予定無しで店番くらいしかやることが無いらしく、それならDVDを貸そうと思ったそうです。けれど、練習三昧で慈郎くんのお家や氷帝学園に行く余裕は無く、どうしようかと思っていたところで桑原くんがそっち方面に出かけるというラッキーなニュース。果たして桑原くんが用事のある場所は、慈郎くんのお家に届けにいける『ついで』の距離なのかはさておき。
ブン太くんには関係ないのです。

『届けてくれるだろい』

そう言われれば否とは返さない、お人よし……もとい、心優しい桑原くんのことを誰よりも知っているブン太くんなのですから。


ちなみにその『アニメのDVD』は桑原くんの記憶が確かなら、後輩の赤也くんの家で強奪……いやいや、しぶる赤也くんに有無を言わさずジャイ○ンっぷりを遺憾なく発揮して表向きは『借りた』しかし実態はほぼ強盗に近い勢いだった、と居合わせた桑原くんと、赤也くんと同学年のテニス部数人は思ったそうです。


「そういえば丸井くん、この連休は家族旅行で温泉、だっけ?」
「あぁ。で、代わりにコレ届けに来た」

クリーニング屋の次男は絶賛店番中で、急に来店した珍しい立海生に目をまん丸くしながらも、彼が手にしているDVDに目を輝かせました。彼のダブルスパートナー、ブン太くんはよく遊びに来るけど、桑原くんがやってくるのは珍しいのです。

「見終わったらブン太に……いや、赤也に返してやって」
「切原??次、切原に貸すの?」
「そのDVD、元々赤也のなんだよ」
「あ、そーなんだ。じゃあ後でメールしとく」
「そうしてやってくれ」

ブン太くんからだと思っていたジローくんは、持ち主が赤也くんなことにちょ〜っと意外だったようですが、桑原くんはジローくんが赤也くんのアドレスを知っていることの方が意外でした。だって、ブン太くんは独占欲の塊で、赤也くんがジローくんに話しかけようものなら『俺のモン、とんじゃねー!』と、プレー中でも何のその。フェンス越しに叫び、全力で邪魔をするのです。


「…あ、珍しく起きてる」


DVDを届けてすぐ帰るのも何だから、とクリーニング屋のカウンターでおしゃべりしていた桑原くんとジローくんですが、突然の来客に揃って入り口に目を向けたら大きな袋を持った男子のご来店。店番中の看板息子が起きていることを『珍しい』というあたり、常連さんっぷりを発揮しておりますが同年代の男の子です。


「いらっしゃ〜い」
「…これ、お願い。……ったく、何で俺がまたここまで置きにこなきゃなんないわけ?…イヤになるよなぁ、忙しいって言ってるのに母さんは全然聞いてくれないし。こき使いすぎなんだよ……ていうか何で起きてるの?いつも寝てるから起こすの大変なのに……まぁ、そのほうが助かるけど…ていうか何で立海の桑原さん?……あんたが丸井さんファンなのは知ってるけど、それにしても桑原さん?」


ノンストップでぶつぶつ呟く男の子は、クリーニング屋の店番とは学校も学年も違うけれど、意外とご近所な校区なのでこの商店街にはたまに遊びに来るようです。彼のお家の近所にもクリーニング屋さんはあるのですが、スーツ類のお洗濯に定評のある芥川クリーニング店は奥様方の間では有名なので、こうやって少し遠出してまで持ってくるお客さんも大勢いらっしゃいます。
伊武さんちの深司くんは、せっかくの連休で部活もオフだけど予定もなく部屋でゴロゴロしていたら、お母さんにおつかいを言い渡され、しぶしぶではありますが何だかんだ言いながらお父さんのスーツを数着持って、徒歩で芥川クリーニング店までやってきた孝行息子です。


「まいどど〜も。スーツの上下が2組と、シャツ5枚ね」


ポケットに何か入っていないか?
目立つ汚れや破れ、傷は無いか?

ほんわかのんびりしている慈郎くんとは思えないくらい、細々チェックする様子に桑原くんは変に感心しました。ブン太くんからは『いつ行ってもカウンターで突っ伏している』と、店番ながらも寝てしまいお客さんを困らせる慈郎くんの話しか聞いたことがありませんでしたが、いやいや器用にぱぱっと処理をして、レジを打っては精算までスピーディにこなしているではありませんか。先払い制なので伊武くんもお財布を取り出して、お母さんから預かった『クリーニング代』を慈郎くんに渡して会計を済ませ、引き換えのレシートを受け取っております。


「えっと〜、来週の月曜には出来ると思う」
「思うって……ほんっと、いつもこうだし。こういうのはちゃんと期日を客に伝えないとダメでしょ?…ったくしょうがないなぁ、まぁアンタだから仕方ないよね……俺んちはそう遠くないからいいけどさ、他の客だったらどうするんだよ。……ここの客は皆知ってるか……困るのは一見の客くらいだよね……でもアンタ知ってる?『氷帝学園前駅の最寄商店街、芥川クリーニングの店番』って、ネットに口コミ載せられてたりするよ。さすがに写真まで出てないけど……困るよねぇ、ここの常連はそんなことしないけど、たまたま来たやつとか、初めて利用したヤツとか、アンタのこと書いちゃってて、ほんと驚いたけど」
「くちこみ?」
「……ま、いっか。月曜…10日か。部活だから母さんか…妹が取りにくるかもしれないけど、もうちょっとかかるなら家に電話いれて……必ず連絡いれてよ。アンタこの前うちに電話しなかったし」
「あはは〜ごめーん」
「…困るよなぁ、ちゃんとやってくんないと。取りに来たらまだ出来てないって。何のためにここまで来たと思ってんだよ……わざわざ部活帰りに寄ったのにさぁ」
「たこ焼きおごったC〜」
「当たり前でしょ……ていうかおごるはずがたこ焼き屋が閉まってて、向日さんちでたこ焼き器で焼いたのに、何がおごっただよ」
「えぇ〜?オレ、焼いた」
「…たこ焼き器はわざわざ忍足サンに自宅から持ってこさせて、タコは魚屋のおばさんにタダで貰って、他の材料は全部忍足サンが持参してきて、結局忍足サンの『おごり』だし…」
「ごめんってば〜。今回はだいじょーぶ。月曜まで出来るから。もっとかかるなら必ず連絡するってば」
「また間違えたら、今度はたこ焼きどころじゃないから……ったく、まだ俺が取りに来るならいいけど、母さんだったら怒られるの俺なんだからさ。いくら俺じゃなくてアンタが間違えたっていっても全然聞いてくれないし。嫌になるよなぁ、うちの身内はアンタに甘くて。母さんに怒られても面倒だし、やっぱり俺が取りに来ようか……仕方ないよな、まったく」
「はいは〜い、来週取りに来てくださいねー」


意外や意外。
伊武くんと慈郎くんは結構仲良しなんですね。



三連休に予定が無く店番を任された芥川クリーニング店の次男、界隈では『看板息子』と囁かれている慈郎くん。
そのお店の常連客かつ、同じく連休中も予定なしな伊武さんちの深司くん。
そして所用があったとはいえ終わった今は予定無しの暇人に違いない桑原くん。

せっかくの秋の行楽日、三連休だというのに三者ともに予定無しだなんて。

その後、お客さんも来ないのでそのままカウンターで三人でお喋りしていたら、芥川クリーニング店の奥様から『店番は終わっていいから、お家入ってもらって中でお喋りしなさい』と声がかかり、桑原くんと伊武くんは芥川家のリビングへ通されました。三連休の真ん中の日曜日だけど、だぁれも予定無しとくればそこは男三人。街へ繰り出す………のではなくお家でゲームして遊ぼう、となるのは『外は祝日で混んでるから』と最近の若者らしい理由かもしれません。けれど慈郎くんはあまりゲームを持っていないので、お隣の岳人くんのお宅にお邪魔することにして、向日家の玄関でピンポーン!


『なんだよジロー。インターホン押すなんて珍し……立海の桑原?ってか伊武もいるし。なに?』


どうやら岳人くんも『暇人』の一人だったようで、画面に映し出された幼馴染とその他2人に少々驚きました。伊武くんは芥川クリーニングの常連なのでたまに商店街で見ますから納得だとして。(この前、たこ焼きパーティを一緒にしたことですし)。立海の丸井くんならともかく、桑原くん?

岳人くんの疑問にここまで来た理由を簡潔に述べた桑原くんですが、そのDVDタイトルを聞いて目を輝かせたのはお隣の伊武くんと、インターホン越しの岳人くん。なんと、慈郎くんだけでなくこの二人も見たがっていたアニメなのですね。
ゲームをする予定で向日家にやってきた三人でしたが、アニメDVDを先に見ることにしました。芥川家のリビングに置いてきたアニメDVDをすぐに取りに行って、向日家で上映会をすることにして(ちなみに取りに行ったのは桑原くんです)、その後ゲーム三昧でお休みを満喫することにした四人。

互いのキャラクターを細かく決めて登録し、オンラインで協力しあい対戦していくゲームを始めたところ、キャラクター『誕生日』入力欄でかぶった『11月3日』。適当に入れてよかったのですが、そこは四人とも素直に自身の誕生日をいれたようです。


ん?11月3日?
おや、明日ではないですか。


「「二人とも、11月3日??」」


画面に映し出された桑原くんと伊武くんの『誕生日』に、慈郎くんと岳人くんはびっくりして、当人二人も互いの誕生日が同じことにまたまたびっくり。さらには二人とも、明日(誕生日当日)は特に用事も何も無いというのですから。

これはもう、遊ぶしかないでしょう。


「じゃ、またたこ焼きしよ?」
「おー、そーすっか。てかそのまま泊まるか?俺んち、別にいいぜ」
「…まぁ、いいけど……そうだなぁ、たこ焼きでしょ?材料買いに…ってどうせまた魚屋でタコゲットできるんだよね、慈郎さんなら。けどたこ焼き器どうするの?また忍足サン?それとも向日サン、この前たこ焼き器欲しいって言ってたけど……買った?」
「お、俺も泊まるのか?悪ィな。じゃあ俺、材料買ってこようか?」


はい、たこ焼きパーティに決定です。

岳人くんはすぐさま携帯を取り出して素早くメッセージを打ち、慈郎くんに『魚屋行ってこい』と指令を飛ばしました。いわく、魚屋さんのおばさんは慈郎くんが可愛くて仕方ないようで、小さい頃から慈郎くんがやってくると、やれこれを持っていけアレを持っていけと色々とくれるそうです。前回のタコも、慈郎くんはちゃんと買いに行ったのですが、おばさんがとびっきりの新鮮なタコを『持っていきな!』と太っ腹でくれました。
(慈郎くんは毎回遠慮せず貰ってしまうのですが、そのたびに芥川家の奥様が後日粗品を持っていったり、クリーニングを無料サービスしたりと、そこは帳尻あわせている模様)

慈郎くんと伊武くんは材料あつめに商店街に出て、桑原くんと向日くんは自宅待機組みでお片づけと準備、たこ焼き以外の料理作りに勤しみました。ちなみに岳人くんは料理はからっきしですが桑原くんが得意だというのでそこを任せて、テーブルや調理ボウル、お皿、とセッティングを行いました。慈郎くんたちが帰ってくると、玄関でなにやら大きなバッグを抱えた忍足くんと遭遇。またしてもたこ焼き器を自宅から持ってきてくれたようです。


『忍足も暇人だC〜』
『誰のおかげでたこ焼き食える思とんねん』


三連休予定無しの暇人がもう一人追加になった向日家のリビングルーム。
岳人くんのご両親も一緒に、盛大なたこ焼きパーティとなりました。
(向日家の長女と次男は『予定あり』でお出かけしております)


たこ焼きパーティ後はゲーム大会の続きとなり、男五人の夜遊びは深夜まで続き、忍足くんも帰らなかったためお布団五枚引いて、川の字で寝転がり就寝。翌朝もしっかり朝ごはんをご馳走になって、それぞれ帰宅………と思いきや、そこは『暇人五人』ですので、11月3日も遊んで、人気のラーメン屋さんに並んでお昼御飯を食べて、ゲームセンターで対戦をして、日が暮れる前にようやく解散、帰路につきました。

桑原くんと伊武くんは、自宅に戻ってから家族に誕生日を祝われ、好きなものが食卓に並ぶお夕飯で11月3日の夜を過ごしました。
ちなみに。




「DVDは頼んだけど……だぁれがジロくんちに泊まれっつった?!」
「ば、馬鹿、芥川んちには泊まってねぇよ。向日の―」
「一緒だろうがこのハゲーッッ!!」
「ハゲてねぇ!」
「うるせぇ、オラ、コートに入れジャッカル。叩きのめしてやる」
「落ち着けって」
「しかも俺が見れなかったのに、なに一緒にDVDまで見てんだよ!?ありえねぇだろい!」
「しょーがねぇだろうが、暇だったんだから」
「とっとと神奈川に戻れー!」


翌日の11月4日、朝練習での立海テニス部部室。
アニメDVDをちゃんと届けた、との話の流れから11月2日〜3日の氷帝メンツとの出来事に話がおよび、立海のジャイ○ンことブン太くんは怒髪、天を衝く。慈郎くんとお菓子に対しては心の狭いヤキモチやきの暴君は大層お怒りなご様子で、桑原くんめがけて怒涛のサーブを打ち込んだそうです。





(終わり)

>>目次

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ジャッカル、ついでに伊武くん、Happy Birthdayです!
誕生日が同じなので、ついでに登場させてしまいました。伊武きゅん…

ペアプリで神尾きゅんかな?
慈郎くんのことを「この前商店街にいったらー」と店番中の慈郎くんが寝ていたと書かれていたので。
神尾きゅんは慈郎くんたちの商店街へ行ける距離にお住まい。
となれば同じ校区の不動峰、伊武きゅんも同じはず。
という設定にしてみました(不動峰は市立ということにしますです)。

慈郎くんがちゃんとクリーニングの受け取り・チェック・精算までしっかり出来るのかどうかはさておき。
(家族経営で常連さんたちばかりなのでよしとします)

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