「政宗様ー!」

「あ? あぁ、月華か、どうした?」

「私のおやつ知りませんか!?」

「知らねーよ! 何で俺に聞くかね……」



おやつが無くなったと、殺気を振り撒いて現れた少女。
政宗は数センチほど抜きかけた刀を、ゆっくりと鞘に戻した。
戦の帰りだったので、真剣だ。



「戦場に菓子持ってくんなよ、怒られんぞ?」

「小十郎様の許可は頂いてますっ」



へぇ、と、政宗は目を丸くした。
あの堅物がねぇ、と呟いて、未だおやつおやつと騒がしい月華の髪を撫でる。



「何だったんだ?」

「胡麻団子です……ぅう……私のおやつ……」



本気で泣き出しそうな月華に呆れ半分、可愛いなぁ半分。
政宗にとって、月華は可愛い妹分。どうも臣下という気がしないのだ。



「あれー、月華、どうかしたの?」

「……成実、そういうことは、口の端の餡を始末してから言った方がいいぜ」

「うそっ、ちゃんと拭いたのにっ!?」

「……成実様……」



月華が成実に向き合う。
しまった、と成実が思ったときには、もう遅かった。
口の端に餡なんて、ない。



「酷ぇ梵、はめやがったな!」

「酷いのは成実様です」



ゆらり、月華が構える。
抜き身の刀身が鈍い煌めきを見せていた。思わず成実の口元が引きつる。



「ま、待て、落ち着けって!」

「この怨み果たさずにいれようか……否! 時任月華、参りますっ」

「待て待て待てっ、悪かったって!」

「問答無用っ、まぐなむすてっぷ!」

「ちょっ、それ梵の技ぎゃぁああああッ」



青い雷が戦場跡を駆けた。



「俺の影武者になるにゃあ、ちっとばかし発音が悪ィな」

「精進します!」

「Ya-ha! 帰ったら団子、作ってやるよ」

「ほんとですかっ? やったぁ、政宗様大好きですー!」

「Thank you. 俺も月華が大好きだぜ」



(小十郎不在だが小十郎贔屓と言い張る。筆頭とは兄弟愛)



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