勝ち戦を祝う宴会で、広間は大いに盛り上がっていた。
無礼講と騒ぎが続く中には、早くも酔い潰れた者たちもいる。



「こじゅぅろぉさまぁーっ」

「っぅお……なんだ、月華か」



背後から突撃され、足元も覚束ない野郎かと振り返った小十郎。
しかし予想に反して、月華が顔を真っ赤にしながら自分に抱き付いている。

にこにこにこ。

すりすり。



「……月華」

「きゃはははははっ!」

「月華に酒飲ませた奴、前出ろ! 前だっ!」



宴会場に雷が落ちた。

政宗は逃げ出した。うまく逃げることができた。
成実は逃げ出した。しかし逃げることはできなかった。
成実に大ダメージ。効果は抜群だ!



「あのねぇ小十郎さまぁ、月華はねぇ、風になるのですっ」

「はぁ?」



にこにこしたまま、突拍子のないことを言い出した月華に、小十郎は眉を寄せた。
そのままグイッと飲もうとしたお猪口を慌てて奪い取る。
案の定、酒だ。
中身を茶に入れ替え、返してやる。



「風になるのでぇーすっ」

「何で風なんだ」



酔っ払いの相手をするのは正直面倒だが、月華がこれ以上酒を飲まないよう見張る必要がある。
小十郎は仕方なく向き合った。



「政宗さまがぁー……鳥に、なる、から」



僅かに、目を見張る。

政宗は時折、空を見上げて呟くことがあった。
生まれ変わったら鳥になりてぇな、と。



「月華が風になってー、政宗さまをのせてあげるのですっ」

「……そうか」



にこにこにこにこ笑う少女は、続けた。



「政宗様の羽が私の風を掴んだら、私が虹までお運びします」

「……お前、本当は酔ってな」

「疲れたらぁーっ」



ふにゃぁっと笑い、月華は茶を飲み干した。
相当熱いだろうに、どうやら気にならないらしい。



「小十郎さまの木に、止まるのですっ」

「……そう、か」



おまけ
「なーに話してんだろうね? 何かいい感じなんだけどー」
「それより成実、焦げてるが平気か?」
「平気じゃないよっ。梵は何で逃げられるのー」
「Ha、小十郎の行動パターンならお見通しだぜ」

「お見通しなら、この小十郎を怒らせるような行動は控えて頂けますか」

「……び、びびったぁ」
「月華抱いてったな。酔いが回ったか」
「あれ、月華は朝帰りかなぁ〜。小十郎ったら羨ましーぃ」
「Hey、気をつけろよ」
「何がってぎゃぁああああっ」

宴会場に雷が落ちた(二回目)。

「鳴神は遠距離技だっつおうと思ったんだが……遅かったな」



(アンジェラスを聞くと政宗様が浮かびます)



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