「すげぇ……小十郎様の動き、まるで舞ってるみてぇだ」
「下がれ、小十郎様に巻き込まれる、って、月華ーっ!」
「お供してきまーす!」
戦場を駆ける男、竜の右目・片倉小十郎。
立ちはだかる敵に怯むことなく、ただ真っ直ぐ道を切り開いていく。
そして、その後ろを少し離れて追う、少女の姿。
「こ、小十郎様、速い……っ」
男と女の脚力では、どう頑張っても離されてしまう。まして小十郎は長身で、足も長い。
あっという間に引き離され、月華は唸った。
「うぅ……小十郎様ぁ……」
「置いていかれたな」
不意に後ろから声を掛けられ、バッと振り返る。
金髪の女がクナイを手に佇んでいた。
「どうする? 同じ女として、手荒い真似はしたくない」
「どうする……って、何が、ですか?」
「守ってくれるはずの男に、置いていかれたんだろう」
月華は首を傾げた。
彼女の言うことが、よくわからなかったのだ。
口振りからして、伊達が今戦っている相手、上杉側の人間なのだろうと予測はつく。
だが、守ってくれるはず? そこが、わからなかった。
「……小十郎様が守るのは、政宗様ですよ?」
「何?」
「……私、政宗様じゃ、ないですよ?」
「わかっている!……真顔で言うことではないだろう」
ふぅ、と息を吐いて、女はクナイを構えて見せた。
鈍い光が煌めく。
「あぁ、忍の方だったんですね!」
「……怖くないのか?」
「怖い?」
「お前は今から死ぬんだ」
「死にませんよ。私、小十郎様に追い付かないといけないんですから」
月華は笑った。
「追い付いて、活躍するの見て貰って……」
「誉めて貰いたい、と?」
「戦場におやつを持ってくるのを許可して頂くんです!」
「……は?」
「小十郎様ったら、ダメだって言うんですよ! ごま団子も笹団子もダメだ、って! 酷いと思いません?! 誰も餡団子持って行きたいなんて言ってないのにっ」
「え……あ、ぁ……そうだ、な……?」
よくわからないまま勢いに押されて頷いてしまった女に、月華は瞳を爛々とさせながら詰め寄った。
「疲れた時に甘い物食べると元気になるのに! ねぇ?!」
「あ、あぁ……まぁ……」
「と、ゆうわけで私は小十郎様を追います!」
「へ?」
「失礼! ふぁんとむだいぶっ!」
青い雷が駆けた。
「……クソッ……やられた……っ」
ぷすぷす。
(団子ばっかだな……と、かすがは思ってるよ!)