武田から訪れた使者、真田幸村と猿飛佐助は、政宗と向き合っていた。
いつもなら彼の側で鋭く目を光らせている存在が、なぜか見当たらない。
二人は揃って首を傾げた。



「右目の旦那、調子でも悪いの?」

「いや……ま、大方、うちの悪戯娘でも追っかけてんだろ」

「娘? 政宗殿には、御息女がいらしたか?」

「違ぇよ」



バタバタと聞こえた足音に、政宗は笑みを浮かべた。
何かあったのだろうか、と武田の二人が思っていた所、スッと襖が開く。



「あ、右目の旦那……じゃ、ない、ね」



現れたのは、女子だった。
サラシを巻き、小十郎の羽織りを肩に掛け、髪はオールバック。



「奥州筆頭、片倉小十郎月華!」



愛らしい声が上がる。
目を丸くする武田の二人をよそに、政宗はとても楽しそうに笑った。



「おいおい、俺は筆頭の座を取られちまったのか? 下克上かよ」

「推して参る!」



本丸御殿に雷が落ちた。



「月華、貴様という奴は……っ!」

「ちゃ、ちゃんと、小十郎様が言ったように、お客様だからおとなしめにやりましたもんっ」

「俺ァ大人しくしてろっつったんだよ!」

「折角成実様にサラシ巻いて頂いたのに!」

「成実ェエエエエッ!」



おまけ
「……あのさ、竜の旦那」
「何だ」
「右目の旦那が怒ってるのは、従兄弟殿が悪戯に荷担したから? それとも、あの子にサラシ巻いたから?」
「どっちも、じゃねぇか?」
「…………………は」
「あれ、旦那? どうし」
「破廉恥でござるぅううううううっ!!!」



(さりげなく筆頭の座を奪取することのどこがおとなしめだったのか)



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