四方八方敵だらけ。
罠だと、そう思った時には遅かった。あっという間に取り囲まれ、刀の切っ先が幾重にもなって自分たちに向かっている。
こいつぁヤバい。
「どうしましょう政宗様、小十郎様」
「どうしましょう、じゃねぇよ月華。テメェがこっちだって言ったんじゃねぇか」
「ついてきたのは政宗様じゃないですかぁ」
「今は切り抜けることを考えて下さい」
小十郎の声が硬くなる。
相当まずい状況なのは、わかる。
わかるが、何たって欧州筆頭とその右目が一緒なのだ。
月華の気はそれほど重くはなかった。
「これ位軽ィもんだろうが、小十郎。」
「それは二人だったらの話です。今は月華がいる」
「大丈夫ですよ、小十郎様! 女は度胸ですからっ!」
足手まといはわかりきっていることなので、反抗はしない。
だからと思って言えば、小十郎は呆れ、政宗は笑った。
「愛嬌、だろうが」
「女に度胸取られちまったら、野郎は何持ってりゃいいんだ?」
「……ブツの、デカさ?」
戦場に雷が落ちた。
「お前には常日頃から慎みを持てとあれほど……!」
「は、はぁ」
「お前も年頃の娘なんだから、もう少し恥じらいというものをだ」
「えっと、あの、小十郎様」
「だいたい今のこの状況も、元はと言えばお前が」
「えっそこ掘り返すんですか?」
「おーい勘解由ー、勝鬨あげてくれー」
(展開に慣れっこな政宗様。毎度毎度なご様子)