赤井さんを引き上げている内に、銃撃は誰かを追うようにポイントを集中させていた。
ひとまず安全を確保して、赤井さんの身を離す。



「キュラソーが見つかったのかな」



不思議そうにこちらを見る赤井さんに、ああそうかと思い直す。彼からは、キュラソーがゴンドラを抜け出したところ、見えなかったよね。

情報共有は大事だ。私からは、アーム付きヘリの話、ヒソカが見たキュラソーの動向と探偵くんのことを話した。
赤井さんの眉が寄った原因はどれだ……全部かな?

赤井さんからは主に爆弾の話。解体に当たったのは安室さんらしい。
爆発しなかったところをみると、解除に成功したのだろうということ。ですよね。しかし何でもできるなあの人……。



「今、攻撃が集中してるのは、キュラソーがあいつらに見つかったってことでいいんだよね」

「だろうな。あの銃撃の中、どこまで保つか……」



険しい顔で外を見上げる彼に倣って、私も外を見やる。相変わらず派手な音を立てるヘリは、一向に銃撃を止めない。



「キュラソー、大丈夫かな……」



彼女は、どうしてゴンドラを抜け出したのだろう。
あのまま乗っていれば、組織に戻れたはずなのに。逃げたということは、組織を裏切ったということだろうか。なんて、楽観的すぎる?

でも、もし。
少年探偵団たちと出会った彼女が、組織には戻りたくないと思ったのなら。
何色にでもなれるキュラソー彼女が、記憶をなくした白が似合う彼女でありたいと思ったのなら。
━━私は、応援したいと思う。

脳裏に浮かんだのは、オセロを前に「お母さんみたい」と面白そうに言った彼女の笑顔。



「……行くか?」

「え?」

「キュラソーが気になるんだろう?」



くつりと笑った赤井さん。
銃撃音の中、彼の言葉はなぜかよく耳に入る。

伸ばされた手は私の髪を撫で、するりと頬を撫でた。



「ここは大丈夫さ」

「……さっき落ちかけたし、その前も殴り合いしてたよね?」

「それを言われると耳が痛い」



苦笑に変わった赤井さんだが、その目は私がキュラソーの元へ向かうことを疑っていない。むしろ後押しすらしてくる。

頬を撫でたまま添えられた手のひらに、そっと上を向かされる。
覗き込むグリーンアイ。



「セレナ。君は君の思うまま、行動するべきだ」



そう言って優しく笑う赤井さんに、胸がきゅっと締め付けられた。
正直に言おう。ときめいた。これはときめきポイント高いぞ……!

ときめいたと同時に、心も決めた。
私は、キュラソーを助ける。

助けられる、と思う。
この銃弾の雨も、私やヒソカなら潜り抜けるのは不可能じゃない。誰にも見つからず、彼女を連れ出すのだって可能なはず。

原作? 知ーらない! 
大体、私やヒソカがいる時点でずれている。

決めた。私が貰う。
キュラソーがこの世界にいてはいけないと原作だれかが言うのなら、世界を越えて貰おうじゃないか。
黒の組織にも名探偵にも、公安にもFBIにも、冥界にだってあげないんだから!



「とまあ、それはそれとして」

「ん?」



ぐい、と胸倉を掴んで引き寄せて、触れるだけのキスを。



「怪我しちゃヤダよ、秀一くん」



目を丸くする赤井さんに笑って、そのまま観覧車からダイブした。
下は海だから平気!別に陸でも平気だけど!

風の音に紛れて、「……心臓に悪い」と呟く赤井さんの声が聞こえた。
うーん、よく耳に入るな自分!



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