『レディース アンド ジェントルマーン!』


テレビに映し出された白衣の男━━怪盗キッドを眺め、私と赤井さんは同時に呟いた。



「「25点」」

「ちょっ、なんでそんな低いの?!」



わたわたとコチラをのぞき込んでくるのは、テレビ画面に映る白衣の怪盗の正体、黒羽快斗である。
画面にLIVE の文字はない。中継ではなく、録画映像だ。昨夜の出来事を報じている。

なんでって言われてもねぇ?と、私と赤井さんは目を合わせる。



「まず、ジェントルマンじゃなくてジェントルメンでしょ」

「男も複数形にしてやらないとな」

「毎回、観衆の面前に堂々と姿を見せるそのライブパフォーマンスは評価するけど」

「きっちりカメラ目線なのはどうなんだ」

「あとは……」

「「発音が悪い」」



「仲いいね、キミたち」



再び声を揃えた私たちに、ヒソカが背後で笑う。

奇術師に怪盗にFBI 。謎のメンバー大集合だ。当たり前のように集ってくるが、悲しいことに慣れている自分もいる。



「で、どうだったの?」

「目当てのじゃなかったから、昨日のうちに返してきたよー」



ここにいるメンバーは皆、快斗がキッドになる理由も、その背景も知っている。
窃盗は立派な犯罪だが、赤井さんも心配こそすれ、とやかく言うことはない。
というか、私が言わせない。



「最近、夜が遅いようだが。授業はしっかり受けてるのか?」



お父さんか!



「お父さんみたいだよ、シューイチ」



私の心の声と同じツッコミをしたのは、ヒソカだ。流石我が息子。
快斗は笑いながら、ヒラヒラと手を振る。



「だいじょーぶ!……あんまり聞いてないけど」

「ほぅ」



ぴくり、と赤井さんの眉が動いたのに気付いた快斗は、慌てて続ける。



「次の予告とか! どうやって盗むかとか! 考える時間が足らないの!」

「毎回凝った予告にしすぎなんじゃないの?」

「えー、だってさぁ、かっこよくしたいじゃん?」



にひひ、と笑う快斗。
この子本当にあの白い怪盗か? いや、本当なんだけどさ。
知ってるけど、知ってるだけに、この素の顔とのギャップがすごい。
こっちの顔を知ってるだけに、キッドの時の気障っぷりとか笑っちゃうもんね。



快斗に懐かれたのは、今思っても本当に想定外だった。
何せ、学校から帰ってきたらリビングでヒソカとお茶していたのだ。
思わず「は?」と声が漏れたのは仕方がなかっただろう。

なんでも、暇を持て余したヒソカが、暇つぶしにマジックをしていたら、快斗から声をかけてきたらしい。
そこからマジック勝負をして、ヒソカが勝ったら、物凄く尊敬されたそうだ。
今でもキラッキラの子犬のように懐いて、慕っている。

自己紹介時に、「怪盗キッドやってます」と言われたときにも「は?」って声が出たね。
いや、知ってるけどね?
でもだからって、こんな初対面で聞く話じゃないよね?

どうやら、快斗はキッドの話を、ヒソカはハンター世界から来た話を、お互いしたらしい。
なぜだ。
どうしてそんな流れに。
頭を抱える事態だが、私はその場にいなかったので、残念ながら全容はわからない。
快斗は同級生に魔女がいるので、異世界トリップもすんなり受け入れた。普通に信じたよこの子。

まあそんな訳で、ポジション的にはお兄ちゃん(ヒソカ)大好きな末っ子、という感じに落ち着いたんですよ。
ツッコミは受け付けない。 



「セレナー? 聞いてる?」

「……あぁ、ごめん、全く聞いてなかった。何?」

「今度の予告の話!」



今夜もにぎやかだ。



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