郊外にあるアミューズメント施設、ラグーン。
CMで流れた「謎解きイベントに、君もチャレンジ!」にノコノコやってきたのは、私と沖矢さんです。
「結構簡単でしたね」
「そりゃ、ファミリー向けですもん……」
園内に散らばった謎を解いて、ゴール地点を目指すというこのイベント。
頭を捻るような謎の他にも、パズルだったりミニゲームだったりと、多種多様なチェックポイントがあった。
だがしかし、そこはこの男。
貴方が難しく思ったら他の人誰も解けないからね!
「楽しくなかったですか?」
「いいえ。セレナさんとデートができて、とても楽しかったですよ」
ニコリと笑う男をじっとり見上げる。
季節は夏。プールが目玉でもある園内には、水着の女の子がたくさんいた。
花柄フリル、スポーティーなボーダー、セクシーなリボン……かわいいねぇ。
いやぁ目の保養、目の保養!
「プール、入りたかったですか」
隣を歩く沖矢さんが問いかける。
「えー、いいですよ。涼しそうとは思いますけど、別に」
「レンタル水着もあるそうですよ」
「一人で入ってたら寂しい奴じゃないですか……」
この暑いのに、沖矢さんは今日もハイネック。首もとにあるチョーカー型の変声器を隠すためだから、仕方ないんだけど。
沖矢さんは水着にはなれないんだよねぇ。
プールの前を横切って、冷房の効いたカフェで一休み。
「たまにはお店で食事をするのもいいものですね」
「あー、“沖矢さん”は自炊生活ですもんね」
赤井さんはしょっちゅう外食するけど。
「なにこれ、色の変わるハーブティー……面白そう」
広げたメニューをのぞき込むと、写真付きで掲載されたケーキセット。
透き通る綺麗な青のグラスの下には、マロウブルーの文字が並ぶ。
「ウスベニアオイですか。夜明けのハーブとも言われるものですね」
博識な沖矢さんに相槌を打ちつつ、メニューに添えられた手書きポップに目を走らせる。
「花言葉は柔和な心、穏やか、温厚、魅力的……沖矢さんみたいですね」
「ほう。魅力的と思ってもらえているんですか?」
「そりゃあ、まぁ。東都大の院生で、背が高くてスタイルも良くて、優しくて……魅力的ですよ、“沖矢さん”は」
顔も好みだし、とは言わないけど。
名探偵のお母様監修というだけあって、“沖矢昴”のイケメン度は高いと思う。お母様と趣味合いそうなんだよね……ぜひお話ししてみたいものです。
クスッと沖矢笑いをした彼が、記された花言葉の一点を指差した。
「熱烈な愛、というのもあるみたいですが」
「……そーですね」
こっちがあえて読み飛ばしたというのに!
クツリ。今度の笑いは赤井笑いだ。
「なるほど、確かに“沖矢”にふさわしいようだ」
「こら」