自家発電で最低限の電力が維持された館内。
そこで明らかとなったのは、フランス・アルルで起きた事件の犯人だった。

二枚目の向日葵を発見した東幸一は、拳銃自殺を図った。
しかしそれは誤りで、双子の弟・幸二が撃ったというのが真実だった。
七人の侍の一人、東幸二である。

向日葵展が開催されたことで、芦屋の向日葵を日本に戻すという目的が達成された彼は、静かに罪を自供した。
これで終わったと思った面々。だが、と東が声を上げる。



「あんたらの言う、怪しい奴は俺じゃない!」



今更何を、という中森警部に、東が反論する。
その時だった。



「火事だ!」

「なにぃ?!」



東の映るモニターに、不自然に光が映る。



「本当に燃えてるんだ!」

「火事よ!」

「早く消して!」



続いて画面に現れた女性陣二人に、ようやく警備室の面々も異変に気付く。
紛うことなき火事である。

鈴木相談役が高らかに、脱出する!と宣言した。退路を確保するため、毛利探偵が扉を開ける。
炎はすぐそこまで来ていた。
火の回りが早い!



「おじさん、早く!」



小さな名探偵の声に振り向けば、鈴木相談役のボディーガードが、まだ作業を続けていた。
寺井さんだ。

脱出用のエレベーターのハッチを開けるとともに、七枚の向日葵を緊急脱出させる準備。
最後にエンターキーを叩きつけるように押して、彼は走り出す。

だが見えた。
向日葵を移す七枚のモニターの内、二枚目と五枚目の向日葵にエラー表示が出ていた。



「早く! こっちです!」

「コナンくん! セレナちゃん!」



脱出用エレベーターの前では、沖矢さんと蘭ちゃんが声を上げていた。
すでに館内は火の海だ。

ああ、なんてこと。向日葵ロード、綺麗だったのになぁ。
感慨に耽っている間に、エレベーターはぐんぐん上昇する。ヒソカ? もちろんいませんよ?

地上に出た一行は、急いでその場から離脱する。
そんな中、小さな姿が来た道を引き返すのが見えた私は、こっそり後を付けた。

ここから先の動きは、沖矢さんには内緒。
後で怒られるって? 知ってる!

おっと、電話だ。



『向日葵、ご丁寧にストッパーが仕掛けられてたよ。今、五枚目の方を外したトコ』



向日葵は、緊急事態には防火防水ケースに入るようになっている。
館内は火の海だが、このケースにさえ入れば絵は無事だ。逆に、ケースに入るのを阻止すれば絵は焼け、この世から葬られる。
それが、犯人の狙い。



「オーケー。二枚目の前で合流しましょ」

『えっちょ、まさかセレナ、戻ってきてないよね?!』



聞こえたのは快斗の声。
ヒソカと上手く合流していたらしい。よかったよかった。



「私があなたを残して出るとでも?」



どっかで聞いた台詞、と思って小さく笑う。
電話の向こうからは、ええええ……という快斗の声が聞こえた。なぜどん引く。



『まさか赤井さんも?!』

「まさか。上に置いてきたに決まってるでしょ」



さっきからめっちゃキャッチ入るからね!
もう気づかれたのか、早い!
怖いから出ないけど!



「あ、そうだ、快斗」

『なに? セレナ、あとで赤井さんに怒られるよ』

「知ってる……じゃなくて。そっち、名探偵行ったよ」

『早く言ってくれる?!』



来たよ!との焦ったような怒ったような声を最後に、通話は切れた。
思わず笑いが零れてくる。

さて、じゃあ二枚目の向日葵は任せて、とりあえずヒソカと合流しますか。



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