ドアを繋いで、帰宅。
赤井さんをそっとリビングのソファに座らせると、少し遅れてヒソカも帰ってきた。
おい、ほんとにどっか捨ててきたよこいつ……。
「シューイチ、ボクが見える?」
「……あぁ」
「目は大丈夫そうだ。でも声が掠れてる……煙を吸ったかな」
ヒソカが軽く診察。他は火傷や擦り傷など、怪我は多いが、命に関わるものはなさそうだ。
そのことに安堵の息を吐くと、バターン!とリビングのドアが開いた。
「セレナ……!」
そのまま突撃をくらう。
突然のことに思わずよろめけば、そのまま体重をかけられて床へと沈んだ。
「か、快斗?」
「セレナのばか! どうして一人で無茶するの!?」
叫ばれて、ぱちりと瞬き。
「ヒソカに聞いた! 変なやつがいるって、気付いてたんでしょ?!」
「え、あ、うん……」
「なんで、俺たちに言わないの! なんであんな奴に捕まっちゃうの!」
矢継ぎ早に続けられて、困惑する。
快斗に押し倒されたままの私は、泣きそうに震える言葉を聞くしかない。
「いや、なんとかするつもりで」
「セレナが強いのは知ってる! でも、じゃあ、なんで、赤井さんもセレナもこんなにボロボロなの! こんなに、こんな……服着て!!」
着てる、と思ったけど、そういえばあの男にザックリいかれたんだった。
快斗が私の上から飛び退いたので、ようやく身を起こす。と、頭からズボッと何かを被せられた。シャツだ。
もぞもぞ首を通すと、こちらを見下ろすヒソカの姿。持ってきてくれたらしい。
着替え終わると、快斗からのタックル。またか!
「セレナが連れ去られたってわかったとき、俺たちがどれだけ心配したかわかる?!」
「快斗……」
「頼ってよ、俺たちを! お願いだから、一人で危ないことしないで!」
「快斗、ごめん」
「俺、やだよ……もう、失うなんて、おれは」
「ごめんっ!」
強く抱きしめれば、はっとしたように言葉を止める快斗。
震える体がすがりついてくる。
ごめん、ごめんね。怖い思いをさせたね。
謝れば、強まる力。
「もっとやりようがあったでしょ」
「ヒソカ……」
「例えわざとでも、セレナがあんな雑魚にいいようにやられる姿なんて見たくない」
つん、とそっぽを向いたヒソカが言葉を連ねる。
「キミは強い。誰よりもボクが知ってる。なら、もっと余裕をもってできたはずだ━━幻滅させないでよ」
結構な言われようだが、ヒソカなりの心配の言葉だと受け取っておく。
心配、っていうか、拗ねてるのかなこの子は。
確かに、ヒソカの言うように、もっとやりようがあったな。赤井さんにも怪我をさせたし、失敗だった。
ヒソカを使うことも考えればよかったかも。
……あぁ、そういうことか。自分を忘れるなって言いたいわけね。
考えがストンと落ち、小さくごめん、と呟いた。
快斗、ヒソカとくれば、次は……
「……なんだ?」
「いや……次は赤井さんのお説教かと……」
私が正直に口にすれば、あぁ、と彼は息をはくように言葉を落とした。
そして、もういい、と続ける。
……もういい?
「言いたかったことは全部、今、言われた」
力が入らないのか、ソファに身を預けたまま、力なく笑う。
「迷惑をかけた。すまない」
「赤井さんが謝ることじゃないよ」
「いいや、あれを取り逃がしたのは俺たちの責任だ。そのせいで余分な手間をとらせ、怪我をさせた。不快な思いも、させただろう」
これくらい何ともない、けど、赤井さんがあんまりにも悲しそうな顔をするから。
心から反省するしかなかった。
「今度からはちゃんと、相談して動くようにします……」
「ああ、そうしてくれ」
「絶対だからね!」
余談だが、ヒソカはあの男を、FBIに捨ててきたらしい。
後日、誠心誠意取り調べているから安心してくれ、と赤井さんが教えてくれた。
すごくいい笑顔だった。ご愁傷様だ。