彼の名前は、イルミ。
私とヒソカのいた世界の住人。
私やヒソカと同じく、念(不思議な力)を使える。
その一つが、変装術。
快斗の計画のために、キッドがほしかったから、私の力で呼び寄せた。
こんな感じの説明に、赤井さんは意外とすんなり納得した。
いやぁ、よかった、あんまり突っ込まれなくて。まさかねぇ、仮にもFBIの人に、暗殺一家の長男だとか言えないよねぇ。その辺りは隠して、ヒソカの友達ということにしておいた。
ヒソカは「友達なのかな?」と首を傾げてたけど、そこは知らん。
「随分、身軽に動くキッドだと思った」
「シューイチも中継を見てたんだね」
「たまたまな」
テレビに映っていたキッドは、ワイヤー銃を駆使して飛んだり、階段から飛び降りたりと、縦横無尽に飛び回っていた。
あれくらいの動き、イルミには出来て当たり前だ。
「びっくり人間かってくらい動いてたね」
「頑張ってたよ。━━普通にやるとどうしても人間外になるから」
後半は私にしか聞き取れない声量で、ヒソカが笑う。
そりゃそうだ。イルミだけじゃない、私も、ヒソカも、ハンターだもの。
人間の動きなんてとうに超えたよね。
「それで、快斗はどうした?」
一緒じゃないのか、と赤井さんがヒソカに問いかける。
「カイトは今頃、飛行機の中かな?」
「飛行機?」
「工藤新一として、ね」
私の補足説明に、赤井さんの眉がぴくりと上がる。
そう、今回キッドを用意した理由はここにある。
本来なら、快斗がキッドの格好をすればいい。しかし、今回、彼は工藤新一にならなければならない。快斗以外のキッドが必要だった訳だ。
「一人で、か?」
そこか!
工藤新一に変装してるのか、とか、パスポートどうしてるんだ、とか、そういうのが気になるのかと思ったら!
アメリカに一人で行かせてるのか、って、気になるのそこなの?!
なんなのこのFBI、過保護すぎなんじゃないの!?
「キッドが騒ぎを起こすまではボクたちといたし、帰りは向日葵御一行と一緒だから、大丈夫だよ」
「明日帰ってくる予定だしね」
無事に帰ってくれば、だけど。
向日葵をどうにかしようと狙う犯人が、道中で何をしでかすか。何もない保証なんてない。
そりゃあ私だって、快斗に危険な目に遭ってほしい訳じゃないし、一人にしないに越したことはないんだけどさ。
「立派に二代目やってるんだから、信用してあげなよ」
「信用と心配は別だろう?」
過保護め!