熱い。
熱い。
内側から焼かれるような熱に、耐えきれずうずくまった。
相澤先生をリカバリーガールに預け、校長室を離れた私。
今朝方、敵に掛けられた「年齢倍増」と「反転」の個性は、そろそろ時間切れのようだった。
身体の熱からそうだろうとは思ったが、予想以上の熱さに悶絶する。なにこれキツい。
なんとか、空きの事務室━━トシの休憩室にたどり着いた私は、そこで力尽きた。
立っているのも辛くて、重力に逆らわずべちゃりと床に倒れ込む。
ああ、熱い。
苦しい。
嫌だ。
助けて。
━━助けが必要なのは、自分だけか?
「……トシ……みん、な……っ」
身体的苦痛に引っ張られて、心の奥に押し込めた不安が顔を出す。
敵連合に襲われたあの場から、
判断は間違っていなかった。
でも、13号先生は? クラスのみんなは?
トシは?
熱さで動けないこの身に嫌気がさす。私は、俺は、ここにいていいの?
こんなところで、うずくまっていていいの?
自分自身との押し問答が始まった。
大丈夫。
━━本当に?
あっちにはトシが、オールマイトがいる。
━━あんな身体なのに?
クラスメイトたちも強い子ばかりだ。
━━まだまだ未熟なのに?
「あっつ……ッ」
この熱を我慢すれば元に戻れる。
━━本当に?
本当、に?
戻れないのかもしれない。
このまま内から焼け落ちて、私は死んでしまうのかもしれない。
オールマイトは敵に負けて、みんな、みんな殺されてしまうかもしれない。
今、俺が、私が、こうしている間にも、あの子たちは助けを求めているのかもしれない。
そんなの駄目だ。
そう思うのに、身体は言うことを聞いてくれない。
苦痛はますます増して、思考さえ蝕まれていく。
あれからどれくらい時間が経った?
いつ引くかも分からない熱と苦しみに、どれほどうなされただろう。長く暗いトンネル。
あぁ、嫌だ、誰か、助けて━━……
「先輩ッ!」
耳が拾った掠れた声と、視界に飛び込んできたブルーアイズ。
満身創痍の長身が、息も絶え絶えといった感じで駆け寄ってくる。
「先輩、先輩っ! しっかりしてください!」
倒れ込む身体を抱き起こされて、その表情がよく見える。
虚ろな視界の中で目が合うと、奴は━━トシは、震える口元を引き上げた。
「もう大丈夫! 私が、私が来ました!」
━━やっぱりお前、最高のヒーローだわ。
声になったかは分からない。
大きな手のひらの温度に安心して、私はつなぎとめていた意識を手放した。