「相澤先生を……お願いします!」
緑谷くんの声をバックに、私はUSJを飛び出した。
一刻も早く、
13号先生も気にはなったが、いくら今の私が成人男性の体とはいえ、二人を抱えて走るのはきつい。
加えて、クラスメートたちも心配━━だけど、私の中の優先度は相澤先生に傾いた。
なぜって、そりゃあまあ惚れた弱みがゼロとは言わないけど、何よりあそこにはトシがいる。
信じてるよ、お前の強さを。
「……いない……?」
窓から忍び込んだ校長室。
学校まで戻ってきたはいいが、周囲に人の気配がないことに眉が寄る。しかし、思い至って息を一つ。
飯田君が、来たんだ。
学校まで走りきった彼は、事情を説明して、多くの先生を連れて再度あちらへ向かったのだろう。校長もその中にいるに違いない。
さて、どうするか。
私のこの現状を知っているのは、今のところ校長とトシだけだ。学校に残っている誰かに相澤先生を託すにしろ、私=雨宮真咲というところから説明しなければならない。
校長を通せば話が早かったのにな、なんて思いながら、未だ目覚めない相澤先生を抱き直す。
起きないなぁ……いやまぁ、当分目覚めないとは思ってるけど。
「誰だい」
聞こえた声は険しい。
だが、私の求めていた声だ。
「怪しい者じゃありません」
「そんな重傷者を抱いて、何言ってるんだか。十分怪しいよ」
ですよね。
自分で言っておいて何だけど、私も怪しいと思う。
見知らぬ男が、重傷のヒーローを抱いている。これが怪しくなくて何だって話だ。
振り返った先には、予想通りリカバリーガールの姿があった。彼女は学校に待機となったようだ。ありがたい。
私を、より正確に言えば私の腕の中の相澤先生を見て、警戒の色を濃くするリカバリーガール。うんうん、ですよね。
さて、どう切り出したものか。こちらに敵意がないと、どう証明しよう?
内心で悩む私をよそに、リカバリーガールはじっくりとこちらを検分する。頭の先から爪先まで、じっくりと見られている、気がする。
やがて視線が絡まると、彼女はその瞳をカッと見開いた。
「アンタ……っ!?」
彼女の問いには答えずに、私はそっと視線を外す。近くのソファーへと、相澤先生を寝かせた。
改めてその容体を視界に入れて、思わず顰めっ面になるのは仕方ない。
ざわりと揺れる心。
大丈夫。大丈夫だよね。
だってリカバリーガールだもの。大丈夫、大丈夫。
心配で離れがたい自分に言い聞かせて、踵を返す。
「彼を頼みます」
「お待ち!」
声を振り切って、入ったときと同じく窓から外へ飛び出した。
相澤先生は、リカバリーガールが治癒してくれる。
あっちにはトシがいる。他の先生たちも向かったはずだ。
じゃあ、
そろそろヤバい。
体が、熱い。