解せぬ。
何が解せぬって、朝起きたら幼児化していたことかな!?

昨夜、普通におやすみ〜したはずなのに、起きたら「あれれー?」状態に陥っていました。全くもって解せない……!

小さくてふにふになお手手を前に、思わず遠い目になるのは仕方がない。
動揺しすぎてベッドから落ちたよね!



「セレナさん? 大きな音がしましたが……」



なんて言いながら部屋に入ってきたのは沖矢さんだった。

あぁ、今日は沖矢さんなのか……じゃなくて! ノック! ノックしよう!?
仮にも女子高生の自室ですよここは!
なぜだか来ていた服まで体のサイズに合わせて小さくなっていたからいいものの……いやよくないか。



「……セレナ、か?」



素が出てますよ。

驚きすぎたのか、翡翠の目を見開いてこちらを見てくる沖矢さんに、苦い顔で頷く。
めっちゃ見上げないと顔が見れないよ。



「どうしてこんなことに?」

「さぁ……まったくもって、こころあたりが、ない」



多少動かしづらいが、何とか思ったとおりには話せる。良かった良かった。
難しい顔をした沖矢さんは、溜め息を一つ吐いて私を抱き上げた。吐きたいの私の方ですけど!?
二、三歳児と思われる体は、ふわりと彼の腕の中に収まる。



「軽いな」

「さいですか」

「体調に変わりは?」

「とくには。うごきにくくて、しゃべりにくいだけ、かな」



ならいいか、と小さく呟いた彼の腕をぺちんと叩く。
よくありません!

というか、この子ども=私だと即座に結びつけた沖矢さん━━赤井さん、すごい。
いくらシチュエーションがそうだったとはいえ、普通、信じられない出来事じゃいのかな。体が縮むなんて。
……あっ、私たちと付き合ってる時点で普通じゃないのか。



「いつまでこの状態なんだ?」

「しらない……とりあえず、ヒソカにれんらく」



連絡しないと、と言い切る前に、パシャリとスマホで写真を撮られ。
ピロンとラインが送信された。



「……ちょっと」

「この方が早いだろう?」



なんとなく楽しそうな優男は、そのまま歩いてリビングへ。
リビングを通り越して……玄関へ。



「ちょっと!?」

「ヒソカから連絡が来るまではどうしようもないでしょう? お散歩ですよ、お散歩」



お、お散歩、だと……?
突然の意味の分からない行動に目を白黒させているうちに、沖矢さんは本当に外へと出てしまった。

がっちり抱っこされているため、逃亡は難易度が高い。逃亡したところで、このリーチ差ではすぐ捕まりそうだ。
仕方なく大人しくしていると、時折背中をポンポンと叩かれる。おい、完全に幼児扱いか……!
しかも何気に慣れていらっしゃる! 



「あーっ! 昴お兄さんだー!」



可愛らしい声が聞こえ、パタパタと複数の足音が寄ってきた。
分かってた。分かってたよ! 遭遇しますよね!
少年探偵団の皆さんです。



「おや皆さん、お帰りですか?」

「うん。ところで沖矢さん、その子って……」



ちらりとこちらを見やるブルー・アイズ。
我らが名探偵の視線が、がっつり私にロックオンされていた。

や、やめて、そんな探るような目で見ないで……こわい……。
思わずぎゅう、と沖矢さんの肩口に顔を押しつける。



「隠れちまったぞ」

「きっと恥ずかしがり屋さんなんですよ!」



なんだか微笑ましい目で見られている気がする、けど、背を向けているので本当のところは分からない。



「ねえ、沖矢さん。その子、誰?」

「もしかして迷子かっ?!」

「えっ、迷子なんですか!?」

「大変! パパとママを探してあげなくちゃ!」



「あぁ、いたいた━━マイガール」



突如脳内にログインしてきたマラカスお兄さんプリンスさまを何とか押しやり、声の主を見た。
少し離れたところに、ヒソカがにっこり笑って立っている。気配で分かってはいたんだけど、助け船なんだろうな!?と焦った目で見てしまうのは仕方ない。

ヒソカおにーさんだー!と明るい歩美ちゃんの声に手を振りつつ近付いてきたヒソカは、私の頭をぽんぽんと撫で、その視線を沖矢さんに向ける。



「なかなか帰ってこないから探しに来ちゃった」

「おや、それはすみません」

「ねえ! ヒソカさん、その子のこと知ってるの?」



にこやかに会話を交わす男二人に割って入ったのは名探偵だ。
相変わらず探るような目のままで、今度はヒソカを見上げている。どんな動きも見逃しません!って感じ。



「うん? モチロン。彼女はボクの、家族━━みたいなモノさ」



バチコン☆とウインクを決めたヒソカに、名探偵と科学者さんは困惑顔だ。
そんな反応が面白かったのか、カラカラ笑ったヒソカは私へと手を伸ばす。
沖矢さんが素直に手渡したので、私の小さな体はヒソカの腕へとライドオーンした。

そのまま帰宅してなんやかんや。
翌朝には戻っていて一安心。なんだったのかね。

まぁいいかと半ば諦めの境地にいる私へと、名探偵&科学者さんの詰問があったのはオマケだ。



「ねえ、セレナねえちゃん……あのさ」

「うん? なにかな」

「ヒソカさんって、その……隠し子とか、いないよね?」

「いない(と思う)よ!?」



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