なんやかんやあって、正体バレました。
まぁ、正体というほどの正体はないんだけど……組織の人間ではないこと、不思議な力を持っていることは広く知られましたね。みんな思考が柔軟だよねぇ。

そんな訳で、いつの間にか私とヒソカは対組織の合同捜査本部における協力者、というポジションに落ち着きました。



「資料は行き渡りましたか? ……では、始めます」



物語もクライマックス。公安・FBI合同の突入作戦会議で、口を開いたのは安室さん。いや、今は降谷さんか。
室内には赤井さんやジョディさんをはじめとするFBI、降谷さんや風見さんたち公安、小さい名探偵に科学者さんの姿もある。ヒソカは突入現場の監視係に任命されたので、ここにはいない。何かあったら連絡が入る予定だ。

配られたA4プリントには、各自の役割やタイミングなどが事細かに書き記されている。
その中に私の名前は━━ない。



「ねぇ、やっぱり私が」

「却下だ」



最後まで言う前に遮られて、思わず眉が寄る。
こちらを見ることもなく「却下」を口にしたのは赤井さんだ。
なんでよ、と食い下がれば、翡翠の瞳が私を写す。



「その怪我を負ったとき、俺の心臓がどれだけ悲鳴を上げたか、分かるか?」



数日前、今回の突入作戦に先だって行われた下見。アジトと思われる建物に侵入して、ざっと間取りを確認してくるっていうお仕事。
身体能力の高さを買われて、私が行ったんですよ。妥当ですね。赤井さんは最後まで反対してたけど。

で、まぁ、ちょっと失敗しまして。

確認も終えて「ずらかるぞ〜」と思ったところで、まさかの携帯が鳴ってね。気付かれてバーン。下っ端さんが撃ったのが脚に当たりましてね。
切ってなかった私も悪いんだけど、このタイミングかよ……と相手を恨んだよ。



「……別に、これくらいどうってことないのに」

「目の前で惚れた女が傷つくのを黙って見ていられるほど、心の広い男じゃないんだ」



真顔で視線合わされる。
その目には、ありありと心配の色が浮かんでいた。

だがしかし。



「あのねぇ、私だって、十中八九怪我するって分かってるところに可愛い子を放り込んでじっと見てなんていられないの」

「気のせいか俺が可愛いの範疇に放り込まれているようだが、そこは大人しく見ていてくれないか」

「やだ」

「俺もやだ」



普段なら「何だその可愛い言い方は」と悶えるところだが、今はそれどころではない。

確かに脚に怪我を負ったのは事実だけど、私の不注意によるものだし、何より本当に何でもない怪我だ。
これくらいで動けなくなっていたら、ハンターなんて名乗っていられない。
まだ完治してはいないけど、正直、今のままでもこの場の誰より動ける自信がある。

睨み合いが続く。
ふ、と息を吐いた赤井さんが、おもむろに私の手を取った。
なに、と思っていると、そのまま、左手の薬指に口付けられる。



「セレナ……頼む」




少し目を伏せて、囁くように告げられた懇願の言葉。



「任せてほしい」

「……見ていられなくなったら、乱入するからね」

「あぁ。その時は助けてくれ」



勝手な話ですまない、と苦笑する赤井さんを軽く睨んで、溜め息一つ。

まったくもう、この子は。
もっと頼ってくれてもいいのにねぇ。



「私が秀一くんを助けない訳ないでしょ。それとも、言葉だけじゃ信じられない?」



未だ赤井さんの口元にある左手を翻して、頬の輪郭をなぞる。
くすぐったいのか、少し緩んだ顔が見られて満足です。



「まさか、信じているとも。こんなに頼りになるダーリンはいないからな」

「でしょ? だから私に前線任せようよハニー」

「おっと、油断も隙もないダーリンだ」



諦めてくれ。えー?
うちのリビングにいるような他愛ない会話を続けていて、ふと、気付いた。

おや? そういえば、室内が静か……



「いちゃつくなら余所でやれ」



怒気マックスの安室さんの静かな一言に、名探偵をはじめ、他の皆が頷いた。
いちゃついてないよ!?



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